岩盤浴のデトックス効果について
投稿者名:トリイ
タイトル:岩盤浴は、毒素排泄効果があるのですか?
五味先生。 ある雑誌で、先生の岩盤浴が有害金属を出すという記事を読みました。 岩盤浴の、毒素排泄効果について教えてください。
投稿者名:五味院長
タイトル:岩盤浴のデトックス効果について
トリイさん。 最近若い女性の雑誌では、「体内からキレイになる」「毒素を出して健康になる」といった話題がブームになっていますね。 今の若い女性は、もう体の表面(皮膚)が美しくなるだけでは、満足しなくなっているのでしょう。体の中から美しくなる願望が強いのですね。 その延長線上に、足りないものを食事やサプリで補うのでなく、余分なものを外に排泄したい願望、つまり毒素排出願望があるのでしょう。 岩盤浴の毒素排出効果への期待もそのような体内美人ブームの一環だと思います。 でも、実際には間違った理解や誤解も多いのです。 そこで、今回は、岩盤浴の本当のデトックス作用(毒素排出作用)について説明しましょう。 その前に「毒素」っていったい何でしょうか? みなさんは何をもって「毒素」と呼んでいるのでしょうか? まず「毒素の定義」から考えていきましょう。 私は、毒素を「体内毒素」と「体外毒素」の二つに分けて考えています。 「体内毒素」とは、人間が生活をした結果、代謝産物として体の中にできた「老廃物」のことを言います。これらには、疲労物質の乳酸や、尿素、尿酸、アンモニアなどが含まれます。 腸内で発生するインドール、スカトール、硫化水素などのニオイ成分も体内毒素と言ってよいでしょう。 「体外毒素」とは、食物と一緒に外部から体に入ってきた有害金属です。一番問題になるのが水銀でしょう。あと、カドミウム、アルミニウム、鉛や、例のカレー事件で有名になった砒素などがあります。 雑誌などでは、この二つを区別しないで、「毒素」と呼んでいるようです。 しかし、それでは岩盤浴の正しい毒素排出作用は分かりません。 以上の二つは、厳密に分けて考えねばなりません。 なぜなら、「体内毒素」を排泄する役割は、本来腎臓にあり、汗には排泄作用は元々備わっていないからです。 だから、汗は尿のような「排泄物」ではありません。 ところがです。 偶然にもと言うか、意に反してと言うか、体外毒素つまり有害金属の多くは、腎臓よりむしろ汗として排出される傾向があるのです。 その理由を知るには、太古の昔に遡らねばなりません。 人間は、進化の過程で、脳細胞を発達させました。 その脳細胞は熱の上昇に非常に弱く、脳温を一定にするために、人間はアポクリン腺というニオイ専用の汗腺を、エクリン腺という体温調節専用の汗腺に改良しながら、進化してきたのです。 つまり、脳の進化は、汗腺の進化と二人三脚だったのです。 ですから、人間の汗腺というのは、全ての器官の中で最も最後にできあがった組織なのです。 最後にできたということは、別な表現をすると、最も「未熟で未完成の器官」といってもよいのです。 そのことは、汗の中に血漿の成分が含まれている事実からも分かります。 汗は血液の血漿を原料にしていますが、その中の「水だけ」を汗として出すことができれば、効率よく蒸発してすばやく体温を調節できるのです。 ところが、実際には、まだ未完成のために、一旦汗腺に汲み取った血漿のミネラルなどの成分を全て元の血液に戻すことができず、少量のナトリウムやカリウムなどのミネラル、そして微量の乳酸などの老廃物も一緒に汗に含まれてでてくるのです。 その理由は、汗腺の導管部での「再吸収」といわれる濾過作用がまだ十分に完成してはいないからです。 「体外毒素」つまり有害金属の排出に関しては、そこがミソなのです。 数千万年前(いつかは知りませんが)、人間の腎臓が今のような形に完成してきた時、「環境汚染」はありませんでした。 つまり、その当時の人間は、水銀や砒素などという金属は自然界にはあっても、人間様の体に入ってくるようなことはなかったのです。 つまり、当時の腎臓は、そのような金属を排出する必要もなく成長してしまったのです。 有害金属などを排泄する役割が与えられず今日に至ったのですから、腎臓にとって、これらの金属を外に出す作業は当然ながら苦手です。 ところがです。 汗腺の方は、まだ完成していない未熟な器官です。 未熟な故、血漿の中に有害金属がたくさん含まれていると、一旦汲み取った金属を元に戻すことができず、そのまま汗と一緒に体外に出てしまうのです。 汗腺はそのような排出行為を意図していませんが、未完成故の怪我の功名と言えるでしょう。 つまり、こと「体外毒素」に関しては、腎臓より汗腺のほうが、排出力は優れていると言えるのです。 ですから、たくさん汗をかけばそれだけ多くの「毒素」が排出されるのです。 しかし、賢明な読者は、ここで岩盤浴の毒素排出に関して大きな疑問をもつでしょう。 以前に私は次のように説明しました。 「岩盤浴は体の芯から温まり、じっくり・ゆっくり汗をかくので、良い汗がかける。良い汗は、血漿成分が少ないので水に近いサラサラ汗である」と。 しかし、今回は「有害金属は、たくさん汗をかけばそれだけ多く排出される」と。 つまり、岩盤浴で、良い汗をかけば、有害金属はあまり排出されないことになり、岩盤浴の毒素排出効果は少ないことになります。 その通りです。 しかし、矛盾はしていません。 実は、汗からの有害金属の排出作用は、岩盤浴の特権ではないのです。どのような汗でも、より多くの汗をかけば、金属は汗とともにより多く排出されるのです。 これは、サウナでもスポーツでも同じです。むしろ、サウナのように一気に汗をかく方が効果的でもあります。 では、岩盤浴は、デトックス効果が乏しいのでしょうか? 岩盤浴ファンのみなさん。がっかりしないでください。大いにあるのです。 しかし、その作用は汗を通じてではありません。 体外毒素については、主に「皮脂腺」を通じて。 体内毒素については、主に「腎臓」を通じてです。 まず「体外毒素」です。 以前説明したように、有害金属は水にとけにくいので、脂肪(皮脂)と結びついて蓄積される傾向があります。(脂肪に金属がつくと燃えない脂肪になる話は過去ログを参照) その皮脂が、岩盤浴で有効に皮脂腺から排出されるようになるのです。 岩盤浴の遠赤外線は、その共鳴振動作用で、皮脂腺の分泌機能をさかんにします。同時にマイナスイオンは、皮脂の酸化を予防して、皮脂腺の詰まりを改善します。この両者の作用で、新鮮な皮脂がどんどん皮膚面に放出されるのです。 有害金属もろともです。 つまり、皮脂腺から脂肪とともに排出される量と(良い汗には有害金属の含有量が少ないと言っても)汗から排出される有害金属の総和を合計したとしたら、岩盤浴の「体外毒素」の排出力は非常に優れていると言えるのです。 次に「体内毒素」です。 岩盤浴で良い汗をかくと、代謝がさかんになります。代謝力が高まると血行がよくなります。全身の血液は、なんと一日に50回以上も腎臓を通って、そのつど老廃物を排泄しているのです。ちょうど山手線が一日に何回もぐるぐる回っているようなものです。 (代謝が悪く、冷え性の人は、この山手線を回る電車の本数が非常に少なく、腎臓駅を通過する回数が少ないのですから、老廃物が体内にたまりやすいのです。) ところが、岩盤浴で、代謝が高まり、血液の流れが良くなると、より多くの血液が腎臓という駅を通過することになり、そのつど乗客が降りるように、老廃物が尿として排泄されることになるのです。 つまり、岩盤浴で良い汗をかくと、より多くの老廃物が尿として体外に排泄されるようになるのです。岩盤浴で腎臓の本来の役目を十分果たすことができるようになったのです。 (そのためにも岩盤浴前・中・後には十分な水分補強が必要です) おわかりでしょうか? 岩盤浴で汗腺は、よけいなことを考えずに、あくまで水に近いサラサラの良い汗をかけばよいのです。 しかし、岩盤浴は、汗腺だけに苦労をかけるようなことはしません。汗腺が良い汗をかいている間に、知らず知らず、皮脂腺をも刺激し、代謝を高めて血行をよくし、毒素の排出機能を高めているのです。 つまり、 良い汗をかいて代謝を高めるのは汗腺の役目。 毒素の排泄は、主に皮脂腺と腎臓の役目。 以上のような役割分担が岩盤浴では、みごとに行われているのです。 このような、毒素排出システムのことを、私は「デトックス」と呼びたいのです。
タイトル:岩盤浴と免疫力について
最近、このHPの岩盤浴についての質問やアクセスが非常に増えてきています。また私の病院にも雑誌やTVの取材の依頼も多く、岩盤浴というものが一般の人にも少しずつ認知されてきたようです。 それも、岩盤浴を体験した人が、良い汗をかいたことで、「汗かき健康法」のすばらしさを実感しているからでしょう。 岩盤浴の効能については既に説明してありますが、さらに、「岩盤浴が免疫力を高める」事実も最近の私達の研究で分かりましたのでここで報告しましょう。 私達は、カプセル式のプライベート岩盤浴を製造しているジェイメックという会社と免疫専門の小田クリニックの小田治範先生にご協力をいただき、岩盤浴が免疫系にどのような変化を及ぼすかの治験をしました。 方法は、ジェイメック製の「ヒーリングコックーン」と呼ばれるカプセル式の岩盤浴を、小田クリニック内に搬入していただき、岩盤浴前後と10日後の免疫機能の変化を、クリニックのスタッフや患者さん計8人に治験者になっていただき測定しました。 結果は、免疫機能の指標となる「NK細胞の活性」が、岩盤浴後に驚くほど高まり、岩盤浴が「免疫力を高める」事実が判明したのです。 具体的な数値を紹介する前に、ここでちょっと免疫についての基本をおさらいしておきましょう。 みなさんは、冬になるとインフルエンザの予防接種をしますね。しかし、その予防接種に効果があるのは、接種をしたものと同じタイプのウイルスがその冬に流行した場合のみです。 実は、人間の体が、免疫機能により「疫を免れる」ことができるのは、過去に経験して「非自己」と記憶をしていた外敵(ウイルスなど)だけなのです。 このように、過去にいろいろな外敵(抗原)を経験(感染)することで身につく免疫系を「獲得免疫」と呼びます。 獲得免疫を司るのは、リンパ球の中で、T細胞とかB細胞と呼ばれるものです。 しかし、これらの細胞は、ガン細胞のように自分の細胞が異常化したものは、異物として認識できないので、免疫力を発揮しにくいのです。 ところが、リンパ球の中には、体の中を常に巡回して、異物がくれば、自己判断でどのようなものでも排除してしまう優れものの細胞があります。 これをナチュラルキラー細胞、通称「NK細胞」と呼んでいます。 NK細胞は、T細胞やB細胞のように教え込まれた特定の癌細胞のみを攻撃するというのではなく、いかなるガン細胞も単独で直接攻撃をしかける性質をもっているのです。 体の中にガンなどの異常が生じたとき、まず最初に反応するのがこのNK細胞なのです。 人間の体では、健康な人でも1日3000〜6000個くらいのガン細胞ができていると言われています。でも、たいてい発症しないですんでいるのは、このNK細胞がガン細胞を早期発見して、ガンの発病を防いでくれているからです。 つまり、NK細胞こそ人間にそなわった「自然治癒力」の担い手と言えるのです。 このような意味で、NK細胞が働く免疫系を「自然免疫」と呼ぶのです。 ですから、病気を予防する力つまり「免疫力」は、主にこのNK細胞に依存していることになります。免疫力を高めるには、このNK細胞に十分働いてもらえばよいのです。 ところがです。このNK細胞が殺傷力をもつためには、パーフォリンという「実弾」が必要なのです。 ただNK細胞が多ければよいというものではないのです。いくら鉄砲があっても弾がなければ、ただの鉄の塊です。 NK細胞が免疫力を発揮するのは、このパーフォリンを細胞の中に顆粒として蓄えることが必要なのです。 パーフォリン顆粒をNK細胞の中に蓄えて臨戦状態になることを「活性化する」と言います。 つまり、NK細胞がどれだけ活性化されているかが、免疫力が高いか低いかの決め手となるのです。 実は、NK細胞自体はリンパ球に占める割り合いが年齢とともに増化しているのです。 ところが一方で、この「活性化率」の方は年齢とともに次第に減少して、二十歳くらで平均45%もあった活性化率は、60歳くらになると20%程度にまで低下してしまいます。だから60歳以上になると発癌率が高まるのです。 つまり、NK細胞の活性化の度合いが、自然治癒力の最も信頼できる指標となるのです。 この「活性化率」が、岩盤浴後に驚くほど高まったのです。 私たちの治験では、例えば Aさんは、「43%→72%」に、Bさんは、「55%→78%」に、Cさんは、「39%→57%」に、さらに、高齢のDさんは、たった23%だったのが20歳の人の平均を上回る52%にまでそれぞれ上昇したのです。 さらに、1回の岩盤浴の効果が、10日後の測定でも、AさんとCさんでは、岩盤浴前より高い数値が持続したのです。 しかし、岩盤浴のどのような効果が、このようにNK細胞の活性化を起こしたのかは、はっきりとはしていません。 遠赤外線の温熱作用がもっとも大きな要因と思われますが、私は、やはり「遠赤外線とマイナスイオンとの相乗作用」ではないかと考えています。 「遠赤外線のみ」の免疫系に及ぼす影響については既に聖マリアンヌ医科大学の倉持先生がマウスを使用した治験で、T細胞やヘルパーT細胞の増加を確認しています。 しかし、自然免疫の担い手である、NK細胞の活性化が「岩盤浴」で高まることを認めたのは今回がはじめてでしょう。 (今回の治験では、NK細胞の活性化のみでなく、その絶対値の指標となるCD56やCD4、CD8についても測定していますが、あまりにも専門的になるので詳しい説明は省略します) ここで、岩盤浴で免疫力が高まることが医学的に証明されたわけですが、私達が今注目しているのは、アトピー性皮膚炎と花粉症への効果です。 私は、特に、花粉症の症状の軽減効果に期待しています。来年の春までには、耳鼻科の先生と協力して岩盤浴の本当の力をもっと検証してみたいと思っています。 好結果がでるようでしたら、またこのHPで紹介しましょう。 ただしです。 これは岩盤浴施設の関係者の方にお願いですが、今回このような医学的データがでましたが、これをもって「岩盤浴でガンが治る」「アトピーに効く」「花粉症の特効薬だ」といったたぐいの言葉を使用しないでください。 岩盤浴は「治療法」ではなく、あくまで「汗かき健康法」です。「利用法」なのです。 岩盤浴で「治癒力」が高まることは分かりました。しかし、それは、さまざまは治療法が効果をあげるための前提が整ったという意味です。 岩盤浴はあくまで気持ちのいい「リラクゼーション法」のひとつという立場を崩さないようにすることが大切です。 岩盤浴に関わる人が、このような公正なスタンスをとって、ことさら過剰な宣伝に走らず、利用者に正しい情報を提供していれば、岩盤浴が、いずれサウナのように、広く一般に認知され普及する日が訪れるでしょう。 いいものは放っておいてもいいものなのです。
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