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岩盤浴の安全性(血圧への影響等)について


投稿者名:岩倉

タイトル:高血圧の方の入浴法について


 

はじめまして 岩盤浴で働いている者です。
お客様からのご質問で、インターネットで調べたら高血圧の方でも入浴しても良いとの事でした。
私共の岩盤浴では、高血圧の方!ペースメーカーの方!心臓の弱い方!飲酒されている方!は入浴を控えて下さい、と伝えていますが、高血圧の方が入浴して大丈夫なのでしょうか?


 

投稿者名:五味院長

タイトル:岩盤浴の安全性(血圧への影響等)について



岩倉さん。
岩盤浴では、高血圧や心臓病等の基礎疾患がある人の入浴は安全かどうかの問題は、今後高齢者の利用が増えると予想されますので非常に重要です。

つい先日、埼玉県のグループホームを運営する会社が高齢者のデイサービスに岩盤浴を併設した高齢者施設の建設を予定している、という内容の新聞報道もありました。
老人でも入りやすいように温度も設定して、岩盤浴で身体機能の低下を防止する介護予防サービスの一環としようというものです。

この報道を見て私は「来るべき時代が来た」という印象を受けました。
なぜなら、今の岩盤浴ブームは若い女性がリードしてきたのですが、私は岩盤浴がブームになる当初から「岩盤浴は高齢者にこそ適切」と主張してきたからです。

岩盤浴を高齢者施設に併設してほしい理由は、5つ(も)あります。

第一は、通常の日本式入浴法にくらべて、はるかに「安全」だからです。
第二は、発汗健康法が、自然治癒力を高め「アンチエイジング法」として有効だからです。
第三は、岩盤浴をその他のリハビリ訓練法と併用することで、リハビリ効果をより高めることができるからです。
第四は、高齢者同士のコミュニケーションや高齢者の社会参加の手段にもなるからです。
第五は、高齢者施設にとって、スタッフの負担や人員配置、ランニングコストさらに宣伝効果等の面で非常にメリットがあるからです。

このようにいくつもの利点があるからには、高齢者施設に岩盤浴が併設されないわけがないのです。
今後益々増加することを期待しています。

さて、このようなたくさんの利点をすべて説明すると、丸一日かかりますので、今回は第一の「安全性」だけにどどめます。(その他は別な機会にお話します)

岩盤浴の安全性は、通常の日本式入浴法と比較するとよく理解できます。

日本式の入浴法にも、良い効果と悪い影響がありますので、まず入浴の身体に及ぼす作用について説明しましょう。
入浴には3大作用があります。
1)温熱作用
2)静水圧作用
3)浮力・粘性作用
です。

入浴の良い効果は、体の清潔が保てることは当然として、温熱効果が体を温め血行を促進し、脳からは気持ちを良くするエンドルフィンが出てリラックス効果があることです。
全身の血液循環の促進は、筋肉にたまった疲労物質の乳酸等の排出を促進し、疲労回復を早めます。
さらに運動機能の低下した人には、浮力や粘性作用で、運動がしやすくなることもあります。

一方で、入浴には危険も伴います。

第一に、水の重さが圧力(静水圧)として体にかかることの危険です。
あなたが、お風呂の水を全てバケツで持ち上げる場面を想像してみてください。全身浴ではその重さが、首から下のすべてにかかるのです。
その結果どうなるか?
水の圧力が胸囲を縮小して心臓を外から圧迫します。さらに腹位も縮小して、横隔膜が持ち上げられ、心臓は中からも圧迫されます。その上に心臓に還流する血液量が増加して、さらに負担を強います。
ですから、心臓にとっては入浴などできればしたくないのですが、日本人は風呂好きときています。しかも熱い湯が好きです。

だから、心臓の弱い高齢者や心疾患のある人では、日本式の座位の入浴では半身浴にするか、全身を湯につかりたかったら西洋式の仰臥位による入浴法が心臓のためなのです。

第二に、熱湯が直に皮膚を刺激してさまざまな生理活性を起こすことの危険です。

ここで、あなたが実際に入浴する場面を想定して、時系列的に「血圧」の変動がどうなるかをみてみましょう。

お湯による温熱刺激の仕方は、温度によって異なります。

最初は、「41度以上の高温浴」の場面です。

一日の疲れを癒すために、あなたはお風呂にドブーンと首まで漬かりました。そうすると、お湯の温熱刺激が交感神経を刺激して、心拍数を増加させ血圧を急激に上昇させます。
「いー湯だなー」と言って5分ほど漬かっていると、今度は、温熱刺激が血管を拡張して、血圧は低下傾向を示します。
一方で、静水圧が血圧上昇という逆の圧力をかけます。
10分ほどして、「そろそろ出ようかな」と思う頃には、上昇→下降→上昇がまぜこぜとなって、一見血圧の変動はありません(のように見えます)。
出浴すると、今度は静水圧が急になくなるため、一過的に血圧が低下します。(このとき立ちくらみや失神が起こりやすいのです。)
そして、あなたは「熱い、熱い」と言ってエアコンにあたり、冷たいビールをグイッと一気に飲むと、今度は急激に血圧が上昇します。

あなたが熱いお風呂に入ったとき、体の中では、このように極めて複雑な生理反応を起こしているのです。
心臓の気持ちにもなってください。上がるのか下がるのかどっちかにしてくれと言いたくなるでしょう。

一方、「38度程度の微温浴」では、入浴時に一過的的に血圧は上昇しますが、すぐ元に戻り、それ以降はやや低めの傾向で安定した経過をたどります。
体もさほど熱くもなりませんから、エアコンをかけずに団扇で扇いで、ゆっくりとビールを飲みますから、血圧も急激にはあがりません。

いかがでしょうか? 入浴では、たった3度の温度の差がこのような極めて対照的な血圧変動の差をもたらすのです。だから、お湯の温度管理は難しいのです。

以上は、入浴の血圧への影響でしたが、実際には、体の生理活性は血圧の変動のみでなく、自律神経の働きにより影響を受けます。

入浴中の自律神経活動の変動については、昭和大学附属病院の片岡喜直先生の報告がありますので紹介しましょう。
片岡先生は、健康成人男性14名に、自律神経の活動を指標にできる心電計を装着してもらい、38度と41度のお湯に15分間入浴していただき、交感神経と副交感神経(迷走神経)への影響を心拍変動解析しました。

その結果、38度の入浴では、入浴から10分程度までは、比較的迷走神経が優位の活動を示し、後半の5分は、今度は交感神経活動が活発になりました。
一方、41度の入浴では、入浴当初から、迷走神経は抑制され、心拍増加や交感神経優位の状態で推移してしまいました。
迷走神経が抑制され、交感神経が活発になる状態は、心血管イベントの発生につながります。
片岡先生は、入浴事故の多い高齢者では、41度の入浴は避けることを(入浴するとしても5分以内にとどめ)、38度の微温浴でも、入浴時間を10分以内にするのが望ましいと報告しています。

以上長々と入浴の身体への影響を説明しましたが、それは岩盤浴との違いが際立ち、岩盤浴の安全性がより明確になるからです。

まず、第一の違いは、岩盤浴にはお湯がないということです。つまり、静水圧がかからないということです。この1点をもってしても、岩盤浴がいかに血圧に急激な変動をもたらさない入浴法かが分かるでしょう。

第二点は、岩盤浴の温熱作用は間接作用であるということです。
皮膚への直接刺激ではありません。直に岩盤の上に横になるのでなく、タオルや毛布の上に間接的に横になります(真っ裸でもありません)。
その上に、背中とお腹を同時に床に接することは不可能ですから、体が岩盤に当る部分は体の半分だけです。入浴が、首から下全面に湯が接しているのとは大違いです。

第三点は、岩盤浴の温度は、サウナなどの比べて比較的低温です。
以前は50度以上の施設も多かったのですが、最近の岩盤浴施設は岩盤の床温度も40度〜50度以内のところがメインのようです。(温度と湿度については、微妙な問題ですので別な機会にお話します)

以上のことを総合すると、例えば45度の岩盤温度としても、岩盤浴の体感温度としては実質的には「40度以下」になっているということです。

つまり岩盤浴の血圧への影響は日本式入浴の微温浴と同じか、それ以下であると言えるのです。心血管系には非常に安定的な入浴法と言ってもよいでしょう。(脱水の問題を別にして)
(実際、昨年私たちが岩盤浴と免疫力との関係を調べる際に治験した人の岩盤浴前後の血圧変動はほとんどありませんでした。)

そこで、あなたの「岩盤浴では高血圧の人でも入浴可能か?」という質問の回答ですが、
「基本的には可能」と考えてよいでしょう。

一般的な高血圧の人の場合には、日本式入浴で41度の高温浴でも血圧の変動がないならまず大丈夫ということです。自宅で日常的に入る高温の湯でも問題ない人なら可能ということです。

しかし、当然ながら当日極端に血圧が高い場合(例えば収縮期の血圧が200近くある人)には避けるのがよいでしょう。

さらに、心臓病や脳梗塞のような血圧の変動を受けやすい基礎疾患がある場合も注意が必要です。
また「早朝高血圧(モーニングサージ)」のような特殊なタイプの高血圧の人も脳梗塞のような重篤な疾患を起こしやすいので控えた方が無難です。
コントロールされていない重症の糖尿病の人も同じです。

岩盤浴の受付では、利用者の入浴前に、これらの健康状態を十分に問い合わせる「問診」の必要があります。(治療は医療行為ですが問診はだれがしてもおとがめはありません。どんどんしてください。)

しかし、岩盤浴利用の適否の判断で大切なことは、(入浴時の血圧の変動をみても分かるように)血圧の上下がそのまま体の自律神経活動の指標となるとは限らないということです。
総合的な医学的な判断能力も要求されます。
ですから、これからの時代には岩盤浴のスタッフでも医学知識は必要です。(岩盤浴が「効く」と謳うのは医療法違反ですが、医学を勉強することは誰がしても自由です。どんどんしてください。)

あなたの質問の中にあるインターネットの記載ですが、血圧が高いだけで岩盤浴はダメというのでは、一日疲れを癒す楽しみでもある入浴や岩盤浴の楽しみを奪うようなものです。臨機応変に考えてください。
逆に血圧が安定している人でも、「脱水」との関係で体には相当な負担がかかることもあるの安心はできないことは心に留めておいてください。
(アルコールを飲んでいる人は、脱水の危険が高まりますので絶対禁忌です。)

このような意味で、岩盤浴のお店でも本来看護師が常勤することが理想です。しかし、現実はむずかしいでしょう。
そこで、利用者に何か体調の変化があったらすぐに対応できるように、近くの医療機関と連携できる体制を整えておくことが望ましいのです。
救急の時受付にすぐ連絡できるような呼び鈴やブザーを岩盤浴ルームに設置をするなど細かい配慮も求められます。

以下は当たり前のことなので蛇足ですが、
安全性の観点から言えば、入浴のもうひとつの危険は「転倒」です。
床に水をまくことで岩盤浴の湿度を保っているお店は注意が必要です。
安全性に関しては、岩盤に出っ張った角のないようなバリアーフリーの設計や室内の明るさも大切です。
最近は暗い方が落ち着くという理由で、安全性よりムードが先行し、照度が軽視される傾向があります。高齢者でも足元が十分見えるような明るさは絶対に必要でしょう。

もうひとつ蛇足(今度は蛇手?)です。
それは、衛生面の安全性です。
岩盤浴は、放射される遠赤外線やマイナスイオンが細菌に対する殺菌作用があるため放置していても室内の清潔が保たれえると思われがちですが、大きな間違いです。
特に、湿度を高めに設定している施設では、カビや雑菌等の繁殖に十分注意しなければなりません。
仮に、たった一店舗でも、岩盤浴の利用に起因する感染性の病気が発生したとマスコミで報道されたなら、今の岩盤浴ブームなどいっぺんで吹っ飛んでしまうことを経営者は肝に銘じなければならないでしょう。
したがって、清潔不潔には十二分な対策を施すともに、クリーン度の判定のために、定期的な細菌検査も必要とされるでしょう。

以上の所見は私の個人的意見ですが、岩盤浴の健全な普及のために個々の経営者が自主的に努力しなければならないことです。
これらのことは、保健所サイドから指摘される前に、積極的に行っていることに意味があるのです。
そのような地道な努力をしているなら、国民の健康増進策の一環として、いずれ行政からのバックアップも期待できるでしょう。

そのためには、医学的データーを用意しなければなりません。
しかし、残念ながら岩盤浴についての医学的検証はまだほとんどされていないのが現状です。
岩盤浴普及のためには、信頼できるエビデンスを収集することが急務なのです。
例えば、今回お話した「自律神経系等に及ぼす影響」など特に重要です。
岩盤浴でも、片岡先生が行なったような、ホルター型心電計を使用した心拍変動の解析が早急に望まれます。
幸い、片岡先生は私の大学の後輩にあたりますので、岩盤浴についても同様な研究を依頼したいのですが、「先立つもの」がないのです。
これらの研究には、研究費というものがかかります。
私のような個人医院では、とてもまかないきれません。

ここで、岩盤浴の経営者の方や岩盤浴関係の会社の方にぜひ協力を御願いしたいと思います。

最後に、巷で岩盤浴の「伝道師?」と言われているワタクシの予言です。

「近い将来には、高齢者が気楽に利用できる岩盤浴センターが全国の津々浦々に出現していることでしょう。
その暁には、岩盤浴が、ブームとしてではなく、予防医療の一翼として国民の健康増進に貢献し、増大する国民医療費抑制策の切り札となっていることでしょう。」

 

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