岩盤浴の安全性(低温熱傷)について
投稿者名:リウ
タイトル:白人でも岩盤浴は大丈夫でしょうか
カナダに住んでいます。 日本から岩盤浴の情報を聞いて、ここカナダで岩盤浴SPAをやりたいと思い、岩盤浴について調べていて、五味先生に是非お聞きしたい事があります。 低体温火傷についてです。カナダでもホットロックマッサージがとてもはやっているのですが、白人の肌はとても弱くすぐに低体温火傷をしてしまうと聞きます。マッサージでも火傷を起こしてしまう肌に、15分〜30分、60度前後の石に寝ていて肌は大丈夫なのでしょうか? 又子供とお年寄りにこそ岩盤浴は良いと先生はおしゃっていましたが、肌にダメージはないのでしょうか? こちらではとても弱い肌のお客様には、バスタオルなどの上からホットロックマッサージをおこなっているようですが、岩盤のうえに厚いタオルなどひいても岩盤浴の効力が得られるのでしょうか? 是非教えてください。
投稿者名:五味院長
タイトル:岩盤浴の安全性(低温熱傷)について
リウさん。 何事にも「安全性」については議論してもしすぎることはありませんし、また心配してもしすぎることはありません。まだ発展途上にある岩盤浴では特にそうです。 海外からこのように医学的なレベルの高い質問が五味クリニックのHPに届くのは「ウエルカム」です。 「岩盤浴では、低温熱傷の心配はないか?」 結論を言いますと、前回の高血圧の質問と全く同じです。 「基本的には、大丈夫です」ただし「・・・・」以外は、ということです。 「・・・・」の部分の説明は後でするとして、まずあなたの質問の「低温熱傷」とはどのようなものかをお話しましょう。 通常、火傷とは煮えたぎった熱い湯や熱せられた鍋などに触れた時おきるものです。 誰しも、一度や二度は火傷をした経験はあるでしょう。 この時の、熱い湯や熱い鍋の温度は、少なくとも「70度以上」の高温です。沸騰した湯なら100度ですし、油ならそれ以上の高熱です。 ところが、たった40度〜60度程度の、さほど熱くない比較的「低温」でも火傷をおこすことがあります。 これを、「低温熱傷」と呼びます。 どのような時に低温熱傷が起きるかというと、湯たんぽや電気アンカやカイロを直接皮膚に長時間接したときです。 湯たんぽや電気アンカは、100度近くにもなるような高温ではありません。通常40〜60度でしょう。ですから、普通はこれらに短時間接したとしても全く問題にはなりません。 ところが、たった40度〜60度の「低温」のものでも、数時間にわたる「長時間」しかも「直接的」に接触していると、りっぱな火傷をおこすことがあるのです。 今、私は「りっぱな火傷」と言いましたが、実はこの「低温熱傷」は、通常の火傷より質が悪いのです。 私もかつて、総合病院の外科に勤務していた時、この低温熱傷の患者さんを治療した経験があるのですが、非常に重篤で治りにくいものでした。 それは、高温での熱傷が皮膚の表面から火傷が進んでいくの対し、この低温熱傷は、皮膚の深部からジワジワと熱傷を受け、極めて難治性なのです。お年寄りの床ずれが治りにくいのと似ています。 さて、岩盤浴ではどうでしょうか? 岩盤浴の温度も40度〜60度くらいが普通です。低温熱傷が生ずる危険性はあるのでしょうか? 仮に岩盤浴でこの低温熱傷が頻回に発生しようものなら大変なことになります。岩盤浴の「安全神話」など瞬時にして崩れさるでしょう。 しかし、心配は無用です。 この低温熱傷が発生するためには、いくつかの条件が重なることが必要だからです。 第一の条件は、「長時間」接しているということです。 この「長時間」が具体的に何時間かという数値は個々のケースによりますが、おおよそ最低5時間から10時間程度ではないかと言われています。(私が経験した症例でも就寝中の8時間はアンカに接触していました) 第二は、皮膚が熱源に「直接」接触し、しかも接触面が熱源と継続的に「密着」していることです。 つまり、じーっとしている時ですから、通常起きているときでなく、就寝時に起こりやすいのです。 第三は、子供や高齢者など皮膚の弱い人や皮膚血行が悪い人に生じやすいことです。 この3つの条件が、たまたま重なった時に低温熱傷の危険性が高くなるのです。 さて、これらの条件を岩盤浴に当てはめて考えてみましょう。 第一の条件の「長時間」です。いががでしょうか? 岩盤浴で5時間以上入浴することはありえますか? 「否」ですね。 15分〜20分も入浴すると、休憩になります。休憩をはさんで、また15分〜20分の入浴を繰り返すのが普通です。 落ち着かないと言えばその通りですが、この「せせこましさ」がこと低温熱傷に関しては安全なのです。 ですから、この1点をもってしても、岩盤浴で低温熱傷がおこる可能性は非常に低いでしょう。 第二の条件ですが、岩盤浴は岩盤に直接「直に」接することはありません。タオルや毛布をして、しかも裸でなく浴衣を着たまま横になるのです。 その上に、同じ体勢で、じっとしているわけではありません。 仰向けと腹ばい(人によっては、逆を)とを、交互に繰り返すことで、体に満遍なく温熱刺激を行き渡らせるのです。体の一部だけ、岩盤にジッーと接触させているようなことはまずないでしょう。 以上の2点をもってして、岩盤浴では低温熱傷の危険性は極めて低い言ってよいと思います。 したがって、あなたの質問の回答ですが、「基本的には大丈夫」です。 しかし、「・・・・」以外は、という但し書きが付きます。 その「・・・・」が、第三の条件の「皮膚の弱い人など」です。 皮膚の弱い人は、やはり例外です。 まず、床ずれのできやすい高齢者や皮膚の薄い幼児です。 幼児が入浴することはありませんが、栄養不良の高齢者や脳梗塞で半身麻痺の高齢者は、特に下肢の血行が悪く、皮膚感覚が鈍っていますので、火傷をおこしやすくなります。 今後、高齢者の利用が増えると、これらの人の入浴法を工夫する必要があるでしょう。 同様な理由で、動脈の閉塞性疾患の人や、コントロールされていない糖尿病の人もリスクが高くなります。 これらのリスクの高い人が、「同じ体勢で」岩盤の上に横になっていた時はこの低温熱傷の発生の危険性は相対的に高くなると言えるでしょう。 しかしです。 この「同じ体勢」でいるのは、ある時だけしかありません。 それは「寝てしまった」時です。電気アンカ等でもそうですが低温熱傷は「就寝中」に最もおこりやすいのです。 逆に言えば、寝込まないかぎりはまず安全とも言えるのです。 ところが、岩盤浴はとても気持ちがいいですね。横になっていると、知らす知らず眠くなります。 ですから、これらのリスクの高い利用者の方には、長時間寝込まないように指導することは必要でしょう。 10分や15分ウトウトするのはかまいませんが、熟眠は避けるようにするのが安全でしょう。 特に、深酔いの時には、熟眠をすることが多いので、アルコールを飲んだ人は、脱水と火傷の二重の危険にさらされます。 受付ではアルコールのニオイがぷんぷんしている人はやんわりとお断りするのが賢明でしょう。 以上は、日本人のケースです。 さて、肌の弱い白人でも岩盤浴は安全かということですが、岩盤浴は万民のものです。日本人のケースと同じに考えてよいでしょう。 確かに、あなたの言うように、白人は皮膚が薄く、強めのマッサージでも表皮が剥離したり、オイル負けして「火傷様の擦過傷」ができてしまうことはよくあります。 特にマッサージは局所を強く擦るため高温の摩擦熱が出やすいのです。 (計ったわけではありませんが、マッサージの方が瞬間的には岩盤浴より高温になのではないかと思います。ですからマッサージでの火傷は、正確に言えば、「低温熱傷」ではなく「高温熱傷」の一種だと思います。) しかし、「岩盤浴」である限り、入浴の仕方は日本と同じようにするでしょうから、普通の健康人なら低温熱傷に関しては心配することはないと思います。(白人の肌については専門家ではありませんが、一応そちらの皮膚科の先生にも確認してください) ただ、白人の中でも、さらに特別皮膚の弱い人は厚めのタオルを使用してもらったり、最初は入浴時間を短くしたりといった配慮は必要と思います。 タオルを厚くした場合の効果ですが、既に「岩盤浴の温熱作用」のところで説明した通り、直接的な「熱伝導」の効果は確かに減少するでしょうが、遠赤外線の「熱産生」や「血液循環」にはさほど影響しないでしょう。皮膚が薄いということはそのような作用が深部に行き渡りやすいということですので、厚いタオルでも十分温熱効果は期待できるでしょう。 以上岩盤浴と低温熱傷について説明しました。 ここからは余談になりますが、あなたはいい所に目をつけたと思います。 欧米人は、岩盤の上に横になるという「入浴法」に非常に関心を抱くはずです。 前回、ワタクシは、岩盤浴の伝道師?として、「近い将来、日本の津々浦々で高齢者用の岩盤浴施設が出現する」ことを予言しましたが、同時に、いずれ海外でも「ガンバンヨク」はブームになることを予言しておきましょう。 ところで、「スキヤキ。カラオケ。ガンバンヨク」って、なんだか分かりますか? これらは、10数年後の未来に、海外でも日本語だけで通用する日本発祥の生活文化の代表です。 スキヤキは、食文化。カラオケは娯楽文化。この二つは既に通用していますが、それに「ガンバンヨク」という日本の入浴文化が加わると思います。 昨年末、私は米国で開催された「アンチエイジング学会」に出席したのですが、その時日本のある会社からカプセル型岩盤浴が出展されていました。他のほとんどのブースは訪問者がチラホラでしたが、その岩盤浴のブースは訪れる人も格段に多く、米国人の「ガンバンヨク」に対する関心の高さが伺えました。 カナダでも同じでしょう。あなたは、非常にタイムリーな選択をしたかもしれません。 当地でのご発展を期待しています。
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