投稿者名:五味院長
タイトル:副乳があると、「器械的方法」では完治は困難です
ナルミさん。
ワキガの手術の関しては、過去ログにほとんど記載済みですので、最近の掲示板では説明する機会がなかったのですが、この質問は始めてですので追加しましょう。
ここでまず「副乳」についてです。
人間の場合、お乳は左右2つだけすね。でも厳密にいうと、元々は豚のお乳のように複数個あったのです。しかし、人間では、1回の出産で通常1人しか子供を産まないため、だんだんと退化していき、今では、胸の左右の乳腺が2つだけ発達して、のこりはなくなってしまったのです。
一方、複数の子供を産む豚ななどの動物では、複数のお乳が必要ですから、胸から腹部にかけていくつものお乳があるのです。
ところが、一部の女性では、退化してなくなるはずの乳腺組織が、胸から腋にかけて残存している場合もあります。
それを「副乳」と言います。
副乳があっても別に異常でも奇形でもありませんので心配いりません。ほっておいてもなんら問題となることもありません。
ところが、腋の「副乳」に関しては、1つだけ問題となることがあります。
「汗」です。
腋に副乳が存在すると、汗が多くでるのです。この事実は私が発見したもので、私は「副乳多汗症」と名前をつけました。
副乳多汗症は、ワキガ手術の時、偶然発見されるケースがほとんどです。
ですから、汗も気になる人のワキガ手術では、この副乳が存在したらアポクリン腺だけでなく、副乳も同時に摘出することが必要となります。
ところがです。
この副乳組織は非常に堅くて(石のようです)皮下に強固に付着しているので、鋭利な鋏で丁寧に皮下組織から剥離しまければとうてい取れるものではありません。
したがって、副乳を伴うワキガ手術では、直に術者の目で確認していく手術(直視下法)でなければ、アポクリン腺と副乳の双方とも完全には摘出できないのです。
あなたが受けた超音波法のような「器械的方法」では無理なのです。
無理以前の問題があります。器械を盲目的に皮下に挿入する方法では、この副乳が「あるかないか」さえ知ることはできないでしょう。
仮に、非常に繊細な医師がいて、器械の先にこの副乳の存在を感じることができたとしても、今度はアポクリン腺と副乳の間に器械をキレイに挿入することが無理なのです。
アポクリン腺の下に挿入できなければ、当然摘出も不可能です。
吸引法(超音波法など)の手術後、再発を訴えて当院に来院された患者さんの再手術をすると、アポクリン腺の直下ではなく、この副乳の下に器械を誤挿入されているケースがほとんどなのです。
吸引機では、石のように硬い副乳は全く吸引されませんから、結果的には、ワキガの原因となるアポクリン腺を1粒も摘出しないままで、脂肪だけを吸引して手術が終わる、というとんでもない事態が起こりうるのです。
しかも、その事実を術者も患者さんも、だれも確認できないままに、「自己満足」だけが残るということになっています。
あなたのケースは、過去3回も手術を受けられていますが、3回とも器械的方法だったとしたら、何の意味もない手術を繰り返したことになるでしょう。
でも、このHPの読者には誤解してほしくないのですが、私はなにも五味クリニックで行われている「直視下剥離法」がベストで、他の「器械的方法」がダメだと言っているわけではないのです。
キズの件や、術後の安静等で器械的方法がメリットのある場合だってあります。
しかし、以前に吸引法(超音波法)等の手術を受けて、不幸にも再発してしまった場合の再手術は、同じ「器械的方法」を繰り返すという愚は避けるべきです。
本来、ワキガ・多汗症の手術は一生に一度のことであるべきです。
これから手術をしようとする人は、「簡単だから」と安易な気持ちで受けるべきではありません。
治療内容について十分勉強してから、自分に最も合った「ベスト」の治療法を選択してほしいと思います。
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