投稿者名:五味院長
タイトル:韓国料理が肌の「保湿性」と「油性成分」を保つ理由について
チャックさん。
今は韓国ブームでもあり、あなたの質問は、若い女性の最も関心あるテーマのひとつですね。「韓国料理と汗との関係」については、私自身一度は説明したいと思っていた話題です。
韓国料理を食べると、だれでも汗をかきますね。
そこで、まず、「汗と美肌効果の関係」を説明しましょう。
最初は一般的な話ですが、汗には皮膚に水分を補給する役目があり、みずみずしい肌を保つ働きがあります。
汗は、「自然の保湿剤」であり「自然の化粧水」でもあるのです。
みなさんは、「綸言汗のごとし」という言葉を知っていますか?綸言とは、君主の言葉です。君主が一旦言った言葉は、一度出た汗のように、元に戻らない。つまり、覆られることはない。という意味ですが、このことわざは本当は間違いです。
汗は、「発汗波」といって、汗腺から皮膚表面に出た汗が、一部は汗腺の導管部に逆戻りしているのです。温泉に入って汗をかくと、温泉の有効成分が吸収されて健康によいのは、汗が逆流するときに、温泉の成分を一緒に体内に吸収しているからです。
それと同じことが皮膚にも言えます。
皮膚面にでた汗は、その一部が導管部に逆流して、そこから、皮膚の真皮や表皮に吸収されているのです。
さらに、汗は、レシチンという界面活性剤のようなものが含まれているので、水の粒が非常に小さく、皮膚表面からもダイレクトに吸収されやすいのです。人工の化粧水より、浸透率は高いくらいです。
だから、汗をかくこと自体が、皮膚の保湿性を高めているのです。
でも「美肌効果」を期待するなら、「保湿性」だけは不十分です。
皮膚の「油分」、つまり、うるおいが必要です。
肌は「みずみずしさ」と「うるおい」の両方があるから、若々しくなるのです。
ですから、汗腺から汗がでるだけでなく、同時に皮脂腺からも皮脂が十分でて、その両者が混ざり合ってよい「皮脂膜」を形成することが大切なのです。(皮脂膜については「岩盤浴」の項も参考にしてください)
良い皮脂膜は、表皮からの水分の蒸発を防ぎ、皮膚の耐水性を高めます。
さらに、健康な皮脂膜には、表皮ブドウ球菌という、善玉の常在菌が住み着いてくれます。表皮ブドウ球菌は汗の成分や皮脂をエサに食べ、酸性物質を産生し、これが黄色ブドウ球菌等の悪玉の細菌が繁殖したり、ウイルス等が外界から侵入することを防いでくれるのです。
さらに、汗からでる免疫グロブリンが皮脂膜内に保たれ、皮膚のバリヤーとなり、皮膚を保護してくれるのです。
だから、美肌には、汗からの「保湿性」と皮脂からの「保油性」の両方が必要なのです。
そこで、登場するのが、韓国料理です。
韓国料理を食べると汗をかくのは、唐辛子の成分の「カプサイシン」のためです。
辛いものを食べると顔や頭に汗が出るのは「味覚性発汗」と呼ばれています。味覚性発汗とカプサイシンの汗は、一部オーバ−ラップしていますが、同じものではありません。味覚性発汗は、人によっては甘いものや苦いものを食べた時でも起こります。これは、一種の「食物反射」で、食物を食べることで、唾液を多く出し、消化を助けるためです。その時、同時に顔面や頭部に分布している発汗神経が刺激されるために汗がでるのです。
一方、カプサイシンは、「脳」と「皮膚」にある温度受容器のニューロンを直接刺激することで汗をかかせるのです。温度ニューロンは、暑くもないのに、いわばカプサイシンにだまされて?発汗指令をしているのです。
通常の外気温が高くなったときの発汗とカプサイシンによる汗の違いは、前者がまず皮膚温のセンサーが優先して反応しているのに対し、後者は、皮膚温のセンサーだけでなく、脳温のセンサーも同時に反応していることです。
皮膚温優位の場合には、主に、交感神経がエクリン腺を刺激して汗をかかせますが、「脳のセンサー」が優位の場合には、交感神経の発汗指令だけでなく、副腎からアドレナリンというホルモンの分泌も促進させます。また、カプサイシンそのものも副腎からアドレナリンを分泌させます。
このアドレナリンは、男性ホルモンと協調して、皮脂腺の新陳代謝を盛んにして、皮脂の分泌を高め、皮膚に油分を供給しているのです。
ですから、カプサイシンからの汗は、「水分」だけでなく、「油分」も多く含まれていたのです。
つまり、韓国料理は、皮膚の「保湿性」と「保油性」の両者を高め、美肌効果に役立っていると言えるのです。
韓国女性の肌がきれいなのには、理由があったのですね。
でも、韓国料理が「美肌」に関係するのは、唐辛子のカプサイシンだけの話でなく、キムチなどの発酵食品が腸内から肌を健康にしたり、ニンニクが皮膚の血行をよくして、肌の新陳代謝を高めていることも忘れてはならないでしょう。
(この話は、又別な機会にお話しましょう。)
最後に、注意しなければいけないことです。
カプサイシンの効果は、持続的に摂取していると、「脱感作」という現象がおき、効果が減少してしまうことです。
韓国人のように幼児期からの食生活で辛いものを受け入れる体質ができている場合は別としても、日本人の場合は和食を主に、その間に時々、韓国料理を加味するというのが正しい食べ方でしょう。
(日本人が「唐辛子ダイエット」を長く続けているとリバウンドをきたしやすいのはこの「脱感作」を起こしやすいためと言われています)。
また、大量の唐辛子を一度に摂取すると、胃腸への負担がかかり、逆に健康を害しますので、食べ方が大切です。
また、唐辛子の多く入った辛いものを食べる時は、同時に暖かい料理を一緒に食べましょう。
前述のように、カプサイシンは、暑くもないのに汗をかかせるわけです。
汗をかけば、当然、汗は皮膚から熱を放出して、体温を低下させます。
つまり、カプサイシンは食べたては暑く感じても、その後は、体は冷やしているのです。
辛い食べ物は、暑い南の国では、体を涼しくしてくれますが、冬の日本では、暖かい食べ物で体を暖めながら摂取するのがよいでしょう。
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