投稿者名:五味院長
タイトル:女性を不快にする男性の体臭の原因物質について
敬さん。先日、朝日新聞で「男の体臭 物質特定」という記事が出てから、あなたと同じ悩みを持つ男性からの質問が殺到していますので、ここでまとめてお答えします。
この「男性の臭い」の話題は、最近、化粧品会社のライオンから「男性の体臭は女性にとって不快である要因の解明」という論文が発表されたことが発端となって、デオドラント関連の関係者の間ではかなりホットなテーマなのです。
資料によると、ライオンは、世界で初めて、男性の体臭の原因物質「アンドロステノン」とその体臭増強作用を解明し、その抑制成分の開発に成功したというものです。
その内容を簡単に説明すると、まず
1)男性の体臭は女性にとって”不快”。
というショッキングな報告です。
報告では、各50人男女の調査で、「女性の体臭を不快と感じた」ことのある男性はたった12%なのに対し、「男性の体臭を不快と感じた」ことのある女性はなんと100%であったというものです。
これが事実としたら、世の男性諸氏にとって座視するわけにはいきませんね。
そこでライオンは、そのように女性を不快にするニオイ物質は一体何だ?
と体臭成分の低級脂肪酸、ケトン類、アルデヒド類、アミン類などの中から、女性より男性に多く含まれている「揮発性ステロイド」に着目し、その中で特に、
2)女性にとって不快に感じる原因物質が「アンドロステノン」である。
ことをつきとめたのです。
ライオンの実験では、揮発性ステロイドのうち、「アンドロステロン」「アンドロスタジエール」「アンドロステノン」の3つを20人の女性に嗅いでもらったところ、「アンドロステノン」だけに「明らかに不快」と感じることが分かったのです。
同時に、脳波計測を行ったところ、気分評価においても同様な結果が確認されたのです。
実は、この「揮発性ステロイド類」を嗅いだ時の脳波に男女で違いが出ることは以前から知られていた事実なのです。
例えば、不思議なことに、「アンドロステノン」を嗅ぐと、脳波上、女性では「覚醒」的波形を描き、男性では反対に「鎮静」的な波形を描くというのです。
一方、「アンドロステロン」は、逆に、女性に「鎮静」作用があり、男性に「覚醒」作用があることが知れています。
ライオンの報告では、さらに
3)「アンドロステノン」は「汗」と混ざることことで臭気が増強し、
4)脂肪酸等の他のニオイ成分の臭気および不快度も増強する。
ということです。
つまり、アンドロステノンは、「男性特有の臭い」を作るだけでなく、「体臭そのものも強くする」要因にもなるということです。
男性が女性より、体臭が強いのは、今まで皮脂腺がより活発であるからとか、エクリン腺やアポクリン腺からの発汗機能が盛んだからと説明されてきましたが、もうひとつの理由も解明されたことになります。
ですから、女性に不快な体臭で嫌われないようにするためには、この「アンドロステノン」が発生する過程を抑制すればよいのです。
ライオンでは、そのような「抑制物質」を根気よく探したのです。
そして、なんと126種類の植物成分をしらみつぶしに検討した結果、
5)「キョウニンエキス」が「アンドロステノン」の発生を抑制する。
ことをつきとめたのです。(これはすごい!)
アンドロステノンは、主に腋のアポクリン腺から、「アンドロステノン硫酸塩」の形で分泌されますが、この段階ではまだ臭いにはなりません。
硫酸塩が、皮膚常在菌によって分解されることで始めて、ニオイとなるのです。
ライオンでは、植物成分のキョウニンエキスが、アンドロステノン硫酸塩が細菌のよって代謝される過程を抑制する事実を実験で確認したのです。
「キョウニン」とはアンズの種子のことです。これは「杏仁」という名前で、古くから漢方薬としてして鎮静・鎮咳作用で使用されていました。
おもしろいことに、キョウニンの生理作用には、女性のエストラジオール(卵胞ホルモン)様作用があることが知られています。
女性ホルモンが、男性に特有な臭いを消すとしたら、非常に皮肉な結果でもありますね。
以上が、今回のライオンの発表の要点です。
ライオンの発表のうち、1)2)については以前から言われていたことですが、3)4)そして、5)の「キョウニンがアンドロステノンの発生を抑制する」ということは、今回が、世界で始めての発表でしょう。
今回の発表の意味は、女性を不快にしないための「男性専用のデオドラント剤」の開発の道を開いたということでしょう。
つまり、「女性のための男性用消臭剤」ができるということです。
よく、男内では人望があるが、女性からはなぜか敬遠される人がいますが、仮にそれが、このアンドロステノンのニオイが原因であったとなると、「同性には好かれ友達も多いけれど、どうも女性に縁がない」と悩んでいる人は、男性専用のデオドラント剤が発売されたなら一度は試してみる価値はあるでしょう。
しかしです。
ここで忘れてはならないことは、揮発性ステロイドには、異性に対してのフェロモン様作用に、「直接的効果」と「間接的効果」の2つがあるということです。
「直接的効果」とは、例えば、雌蛾のフェロモンが雄蛾を直接引きつけたり、動物のように、メスがオスを発情させて具体的に求愛行動を誘発するような作用で、「リリーサー効果」と呼んでいます。
ある女性がある男性の体臭を嗅いだとき、「ムッとして」、不快と「意識させ」、その男性を「避ける」といった具体的行動を招くのは、「逆の意味で」一種のリリーサー効果であるとも言えるでしょう。
「間接的効果」とは、そのニオイを嗅いでも別に意識や行動には変化を与えることはないが、体の中のホルモン系や神経系に無意識に働き、生理過程に影響を与える作用で、「プライマー効果」と呼んでいます。
例えば、女性だけで暮らす寄宿舎のような環境では、そこに住む女性達の月経周期が同じになりやすくなったり、
月経周期が乱れていた女性に、男性の腋の抽出液を定期的に嗅いでもらうと月経周期が正常になったというような報告もありあます。
今回の実験でも、女性が男性の体臭を嗅いで不快と感じたのは、「経験的」「文化的」な要素もあり、多分に大脳皮質の前頭葉の「意識の働き」が優先しているのかもしれません。
核家族で、父親不在で、嗅覚の嗜好が決まる幼児期に、「男の匂い」にあまり接しなかった現代女性では、このような傾向が強いでしょう。
でも、そのような女性でも、意識下(生理的には)では、快と感じて、自律神経やホルモン系が安心・安定している可能性だってあるかもしれません。
男と女というものは、世界で2つしかない存在です。(中間の人もたくさんいますが)
その2つしかない存在の一方の女性が、もう一方の存在を不快と感じるようでは夢も希望もありません。
世の中はそのようには決してできていないのではないかとワタクシは切に願うのでありまーす。
やはり、男性は女性の匂いに、女性は男性の匂いにお互いに魅力を感じて、世界の中心で愛を語るのが自然の摂理というものではないでしょうか(この部分自信なし)。
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