投稿者名:五味院長
タイトル:抗コリン剤の正しい使い方
雪風さん。
メールを拝見して、あなたが、「汗問題」という本当に深刻な悩みを抱えながらも、前向きに生活している様子がひしひしと伝わってきました。
何か私自身が元気づけられた気分になりました。これは同時に汗で悩む人々の励みにもなるのではないかと思い掲示版に追加記載させてもらいました。
まず、プロバンサインの件ですが、一つ大切なことがあります。
プロバンサインは抗コリン剤という種類の薬で、通常は腹痛などの痛み止めに使用します。
何故多汗症に効果があるかというと、本来、発汗刺激を行う交感神経の末端からはアドレナリンという神伝達物質が分泌されますが、汗腺だけは例外的にアセチルコリンという物質が分泌されるのです。
そのため、このアセチルコリンの分泌を抑制する抗コリン剤を服用することで発汗を抑えることが出来るのです。(まさに汗散るコリンですね)
しかし、ここで注意することは、抗コリン剤は汗腺のアセチルコリンのみならず全身のアセチルコリンも抑制することです。
抗コリン剤を服用すると、喉が渇いたり、目が渇いたり、尿の出が少なくなったりという「副作用」が生ずるのはこのためです。
ですから、この抗コリン剤を継続的に服用することはお薦めできません。
できれば、何か特殊な時(会議やピアノの演奏会など)のみ、例えば1ヶ月に1回程度、1時間くらい前に飲むようにすることがよいでしょう。
むしろ、わたしはプロバンサインを財布の中に入れて持ち歩くだけでもよいと思います。つまり、「お守り」代わりです。
「飲めばいつでも汗を減らせるんだ」という安心感は、「自信」になります。
この自信が、あなたの汗の原因でもある「予期不安」を減少させてくれるのです。
ここでわたしが言いたいことは、あなたは今、多汗という悩みを抱えながらも、立派な社会生活を営んでいますが、それを支えているのは、汗以外の分野(国家資格などの)での「自信」なのです。
これはわたしの25年の診療経験ではっきりと断定できることですが、体臭多汗で悩む人に、「鈍感」な人はひとりもいません。鈍感な人は、他人の心を推し量ったり、周囲の人の気持ちを先追いして(予期不安のこと)体臭や汗などで悩むわけがないのです。
つまり、汗で悩む彼らや彼女らは、みな潜在的にすばらしい「感性」をもっているのです。
そのような感性を汗やニオイ以外の「何か」に向けるならば、その分野で成功しないわけがないのです。
まず、小さな「達成体験」をつくることです。どんな小さな達成感でも、それは自信をもたらします。
遠回りのようですが、一度「汗の分野」から身を引き、距離を置いて、何か違う分野にあなた方の感性という能力を発揮することが最も効果的な減汗法なのです。
最後に、ご質問の漢方薬とプロバンサインの郵送の件ですが、来院された場合にのみ処方しておりますので、郵送はできません。 (※註:現在、漢方薬、プロバンサインの処方はしておりません)
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