投稿者名:五味院長
タイトル:腋臭の遺伝について
かなり高度の質問ですね。
このサイトの訪問者の知的関心の高さがうかがえますが、優勢遺伝について、分かりやすく説明することはかなり難しいです。
しかし、重要な問題も含まれていますので、少し詳しく説明しましょう。
ようこさんの理解していることは必ずしも間違いではありません。
私たちの体の遺伝子は仲良く二つづつ並んであるのはご存知ですね。これを「対立遺伝子」と言います。
この遺伝子の命令が体の特徴をつくるのですが、その遺伝形質の発現に関しては、その二つの対立遺伝子は決して仲良くないのです。
つまり、二つの遺伝子の特徴が両方一緒に体に出るのではなく、どちらか一つだけが発現されることが多いのです。
その発現しやすい遺伝子の方を「優勢」であるといい、そのような遺伝の仕方を「優勢遺伝」といいます。逆に発現しない方を「劣勢」と言います。
例えば、仮にA子さんの目の遺伝子に「パッチリ型」と「切れ長型」のふたつの対立遺伝子があり、「切れ長型」の方が優勢であったなら、A子さんの目は、パッチリと切れ長の中間の目ではなく、切れ長の目になるのです。
「耳垢の軟らかい」という特徴が、この優勢遺伝にあたります。
つまり、Bさんが、「耳垢が軟らかい」遺伝子と「耳垢が乾燥している」遺伝子のふたつの対立遺伝子があったら、「耳垢の軟らかい」という特徴をもった遺伝子が優勢であるため、Bさんの耳垢は必ず「軟らかく」なるのです。
ですから耳垢と関連の深い「腋臭」についても同じことが言えるのです。
腋臭は優勢遺伝のため、対立遺伝子の一方に「非腋臭」という対立遺伝子があっても必ず「腋臭」という遺伝形質となるのです。
わかりましたでしょうか?
腋臭の親から子への遺伝については、片親が腋臭の遺伝子を持っているか両親が持っているかによっても違いますが、日本人の場合どちらかが腋臭ならば統計的には約30%つまり生まれてくる子供が3人いたら1人くらいが腋臭の遺伝形質が発現すると言われています。
つまり、ようこさんお父さんの兄弟のケースとちょうど一致するわけです。
結婚による遺伝確率の問題は、また複雑な要因がからんでいて、非常に難しい「遺伝子診断」の領域に入りますので、わたしにはよくわかりません。
一般的には、あなたが腋臭でなければ確率はやはり30%と考えてほぼ間違いないでしょう。
しかし、ここで大切なことがあります。(ここが一番重要なことです)
通常、遺伝子により「疾患」として発現した場合には、現代医学が進歩したと言っても、治療がなかなか難しい病気が多いのです。
大切なことの第一は、まず腋臭は「病気」ではないということです。
第二は、仮に生まれてきた子が将来腋臭で悩んだとしても、その悩みは「正しい手術法」を選択したら、必ず解消できるということです。
ですから、結婚の際、腋臭であるかどうかなどという問題が考慮されることは、全く不要の条件であるということはここでぜひ理解していただきたいと思います。
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