投稿者名:五味院長
タイトル:皮脂腺からの臭いについて
今回は、皮脂腺からの匂いについて説明しましょう。
あなたの頭皮が油症であるなら、皮脂の活動が比較的活発なのかもしれません。
しかし、それ自体は悪いことではありません。
皮脂腺の分泌が健康的に活発なことは、良い皮脂膜を形成するうえで必要です。皮脂膜は、皮膚表面を柔らかくして皮膚の保水性を保ったり、皮膚のバリヤーとなって外部からの細菌などの侵入を防いだり、酸素の通気性を高め皮膚呼吸を盛んにしたりと非常に重要な働きをしています。
この皮脂膜が破壊されたり、構成成分のバランスがくずれたりすると、体臭が強くなるのです。
それは、主に三つの要因が関与します。
第一は、皮膚の常在細菌叢が変化することです。通常の常在細菌叢は、より悪臭を発生する悪玉の細菌の増殖を防いでいるのですが、皮脂膜が破壊されたりして変化すると、より強い臭いを作る細菌が棲みついてしまうのです。そのことは、皮脂腺の皮脂そのものの臭いが強くなることを意味します。つまり、例え皮脂腺の分泌には変化がなくても、皮脂膜が変化することで、皮脂腺からの臭いは強くなるのです。
さらに、この状態が持続した場合には、皮脂腺の中の変化が生じてきます。つまり、皮脂腺のなかに「過酸化脂質」という酸化物質が増加してくるのです。この過酸化脂質は、脂肪酸の酸化発酵を促進して、臭いの強いアルデヒド類や短鎖の脂肪酸を連続的に生成します。
例えば、「オヤジ臭」の元といわれるノネナールという臭い物質はこのような形でできるのです。
第二は、エクリン腺の汗の臭いを強くします。
皮脂膜が破壊されると、発汗された汗は皮膚の上にまんべんなく分布して広がり、すばやく蒸発することができなくなるため、皮膚上に血漿成分の塩分や重炭酸イオンなどの臭い成分が蓄積しやすくなり、汗くささを強くします。
第三は、皮膚呼吸が阻害されることで、皮膚の毛細血管の酸素濃度が低下します。前に説明した通り、無酸素下では汗腺は「解糖系」という方法でエネルギーを得ようとするため、不完全燃焼が起き乳酸が多量に生産されてしまいます。この乳酸が増加するとそれに比例して汗腺のなかにアンモニアが増加する傾向があります。当然体臭は強くなります。
以上のように健康な皮脂膜は体臭予防のために大切な働きをしています。
ですから、皮脂膜破壊されたり、皮膚のPHがアルカリに傾いたり、皮脂腺が刺激をうけすぎたりすることには注意する必要があるのです。
このような状態になるのは、 まず石鹸の使いすぎです。体臭を気にしている人は清潔を志向するあまり、石鹸やシャンプー、ボデイソープなどを大量に使い皮膚の皮がむけるくらい強く洗う傾向があります。
これはむしろ皮脂膜を破壊し、皮膚をアルカリに傾けてしまい逆効果なのです。
次にストレスです。
ストレスは副腎からアドレナリンを分泌させるために皮脂腺を以上に刺激して、脂肪酸の酸化を促進して体臭を強めます。
体臭を気にする人はこの点でも不利です。会社などで人間関係を気遣うあまり、ストレスを受けやすいからです。
また食生活も影響します。
特に、脂質の取り方が大切です。(これについては過去ログを参考にしてください)
最後の質問ですが、わきの下の皮脂腺は毛根に開口しているため、アポクリン腺の腺根まで剥離するような手術では、ほとんど摘出されるのが普通です。しかし、皮脂腺はアポクリン腺と違い、目で確認できないような小さなものもあるため完全100%に取れたと断定することはできません。
しかし、あなたが手術をうけた先生が言うように「わきの手術では皮脂腺が取れずに残る」というのは間違いです。
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