投稿者名:五味院長
タイトル:多汗症の手術についてお答えします
みみさん
わかりました。手術の適応について十分考慮され、尚且つご自分の多汗症のタイプをよく理解されたということで手術についてのご質問にお答えします。
まず、麻酔についてですが、ワキガでも多汗症でも歯医者さんの麻酔と同じ「局所麻酔」です。
正しい麻酔法に従えば静脈麻酔等の「全身麻酔」の必要は全くありません。
ワキガ多汗症の手術は、皮膚のほんの下の部分が手術野となるためアテローム等の深部手術の時ような痛みはありません。
しかも、通常の0.5%の麻酔薬をさらに半分に希釈したものを最小限使用するだけで十分無痛の手術が可能です。
しかし、そのためには条件があります。 それは、アポクリン腺の剥離を皮下の脂肪層と汗腺の間にある被膜の部分で行わなければならないということです。皮下の被膜をきれいに剥離していく限り出血も少なく、神経や血管が分布する深層の脂肪層まで手術層が達しないため、痛みもなく結果的に少量の麻酔により手術が可能となるのです。
このような、被膜の部分をきれいに剥離するためには術者が直に被膜とアポクリン腺とを「確認」しながら手術を行う「直視下法」が望まれます。
ブラインド手術(非直視下)となる「機械的方法」では、被膜の間に正確に機械を挿入することが難しく、どうしても深層の組織まで達してしまうため結果的に大量の麻酔が必要となってしまいます。
また、麻酔については、その量や投与法だけでなく、過去の麻酔のアレルギーの有無についての問診や麻酔の経験のない人では、術前にテストをするなど細心の注意を払わなければならないのは当然です。
以前、美容外科チェーンでの麻酔事故が新聞で報道されましたが、「機械的方法」であったために必要以上の極めて大量の麻酔薬使用が原因でした。
このような事故は、正しい手術法と麻酔法に従っている限り起こり得るはずがないような初歩的なミスといえましょう。
わたしは、ワキガ多汗症の手術は、麻酔の仕方(例えば、神経の走行に沿ったポイント麻酔など)ひとつをとっても長年の経験が要求される手術であり、美容手術の片手間に行い得る手術ではないという感想をもっています。
次にわきの「固定」についてですが、これはタイオーバーといってこの手術では絶対に必要となる大切な固定法なのです。
なぜなら、将来の再発を防ぐために(多汗症ではエクリン腺もできるだけ取り除くため)真皮層の一部まで含めて剥離をします。そのために、真皮に分布する毛細血管を含めて取るため患部皮膚は一時的に「植皮」と同様な状態になります。植皮ではタイオーバーという固定が必ず必要となるのです。
ですから、タイオーバーは完全な手術法の前提となる大切な処置と言えるでしょう。 この固定は最低4〜5日です。この間は、やや肩が張った感じとなりますが、入院のかわりというに考えて辛抱していただきたいと思います。
見た目では、一般の人が外見からみても分からないように小さくすることは可能です。 腕の動きは、上記の固定をしている間は、動かしにくくなりますが(動かしにくくしているのです)日常生活動作に支障はありません。(急激に腕を動かさないようにしてください。)
腕の動きに注意すれば、事務仕事などでは、会社を休まむ必要はないと思います。
もちろん、手術は手術です。
一生に一度のことですから、1週間程度は出来るだけ大事にされるのがよいでしょう。
以上ですが、まだまだ手術について知りたいこと、不安なことがあると思います。遠慮なくこの掲示板にてご質問されてください。
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