投稿者名:五味院長
タイトル:手術後の経過について
Mさん
わかりました。仮に来年の3月1日の午後1時に手術をすると仮定して説明しましょう。 手術は40分くらいで終了しますので、午後2時には歩いて家に帰れます。しかしこの時から4日間は、わきにガーゼをあてていますので、日常生活には支障がありませんが、腕の動きが多少制限されます。
当日はできれば家で安静にしているのがよいでしょう。軽い事務仕事程度では休む必要はありませんが、急激に腕を動かさないように注意してください。
そして3月4日にはガーゼをはずします。これでかなり楽になります。でもまだ患部が治癒したわけではないので、もう2、3日はなるべく動き回らないほうがよいでしょう。
その間、2〜3回通院可能な人は消毒に来ていただきますが自分で消毒することも可能です。
そして約2週間後に切開口の縫合の糸(2〜3糸です)を取ります。
遠方の人はデキソンという溶ける糸を使いますの抜糸の必要はありません。
ここまでは、全員が同じ経過です。しかしその後は患者さんの皮膚の性質や術後の動き具合によって経過が異なります。
まず、術後に急激な動きをした人は切開口が開き気味になることがあります。
その時は、開いた部分がやや白っぽくなっています。しかしこれは化膿しているわけではありませんので、自分で消毒をしていると普通は1ヶ月以内に自然に閉鎖してしまいます。脇の下は皮膚にゆとりのある部分ですので治癒しやすいのです。
しかし、非常に稀ですが、強い腕の動きをして内出血をした場合や患部が不潔になり周囲の菌が傷口に入った場合では、傷口の閉鎖に少し時間がかかることがあります。
その後、2ヶ月から3ヶ月は手術でアポクリン腺を摘出した範囲の皮膚が硬く、薄茶色に色素沈着して、かなり目立ちますので覚悟してください。
これは再発のない完全な手術では患部が「植皮」の状態になるためで、必ず通過しなけれはならない試練です。
しかし、3ヶ月を過ぎると次第に皮膚も軟らかくなり色素沈着も急激にとれてきて6ヶ月頃になるとだいぶ目立たなくなります。
ただ、ケロイド体質の人では、手術後6ヶ月から1年くらいにかけて傷口や糸の後がしだいに盛り上がってきてかなり目立ちます。
そこで私のクリニックでは3ヶ月くらいに「検診」を行います。ケロイドはケナコルトという予防の注射をすることである程度きれいにすることがでるからです。(勿論普通の人のようにまできれいにはなりませんが)
あなたの場合には既にケロイドであることが分かっていますので、早めに術後2ヶ月くらいに予防の注射をした方がよいでしょう。また今はケロイド予防の
飲み薬もあります。
そして、さらに6ヶ月ぐらいつまり手術してから1年くらいすると皮膚も普通の状態となり傷もほぼ目立たなくなります。
しかし、手術ですから傷がなくなるわけではないのです。
人によっては切開口の部分や糸の後がすこし黒っぽく色素が残ることがあります。この程度の傷を気にするかしないかは、患者さんの臭いに対する悩みの強さの違いのようです。強く悩んでいた人では、臭いからの開放の喜びの方が大きいために全くきにならないようです。
さてあなたのケースですが7月頃といえば術後4ヶ月目です。この時期は、目立つ時期と目立たなくなる時期のちょうど中間にあたります、しかもあなたの場合にはケロイド体質ということですから一応薄茶色でやや硬みがまだ残っていることを覚悟した方がよいかもしれません。
ただ、海などへ海水浴に行ったときに脇をまざまざと見られるのではなければ 他人にわかるようなことはないと思います。
以上の説明はあくまで一般的なケースです。傷の経過は人によって本当に差があります(3ヶ月も経てば全く目立たなくなる人もいます)ので、この点を十分に考慮して、手術を受けるか受けないか、受けるとしたらその時期をきめることが大切だと思います。
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