投稿者名:めぐ
タイトル:エクリン腺がメインの混合臭とは?
先日はご丁寧な回答ありがとうございました。 先生のお答えを拝見して前回の質問についてはよく理解しましたが、新たな疑問が生じました。 「エクリン腺をメインにしている混合臭」とはどういうものなのでしょうか? わたしの場合、臭いが明確にわかっていて「自己診断法」でも遺伝以外は全てあてはまるのですが、臭いの程度については制汗剤を使っていれば他人にわかるほどのものではありません。 自分で臭いが明確にわかっていて自己診断法で条件を満たしていても、わきの臭いが強くない場合は、その臭いはエクリン腺をメインにした混合臭という可能性もあるのでしょうか? こういう場合、わきがの手術をしてもわきの臭いはあまり変わらないということはあるのでしょうか? また、アポ腺の量に係わらずアポ腺を取ればわきが臭はなくなり、今の臭いの程度は確実に軽減するのでしょうか? お手数をおかけしますが、よろしくお願い致します。
投稿者名:五味院長
タイトル:ニオイと嗅覚の不確実性について。
めぐさん。 大変よい質問であり、かつ難しい質問です。 素人のあなたがこのような高度な疑問を持つことに驚嘆するばかりです。 あなたの質問は、「ニオイとは何か」「体臭をつくるものな何か」「わきがの定義は?」「嗅覚の性質」などの全ての問題を含んでいるのです。 まず、ニオイの性質を説明しましょう。 ニオイ成分は、何十万種類とあります。 しかし、日常私達が「コーヒーのニオイ」とか「納豆のニオイ」とか嗅いでいるのは、ある一つのニオイ成分ではなく、何十種類といういくつかのニオイが混合された「複合臭」なのです。 その中のある一つの成分比が変わった場合だけで、「違う」ニオイと感じることさえあります。 さらに複雑なことは、ある一定の「複合臭」を嗅いで「コーヒーのニオイ」と感じるのはその人の「嗅覚の働き」と「ニオイの識別能」によっても異なるということです。つまり感じ方に非常に個性があるのが嗅覚の性質です。 体臭でも同じです。 通常、体臭というものは、イソ吉草酸、酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸エチル等の脂肪酸が何十種類も混合されて「その人の体臭」として自覚されます。 ですから、その人の体臭はいつも一定に感じられるわけでもなく、また全ての人が同じように嗅いでいるわけでもないのです。 このことは腋の下の「わきが臭」についても言えます。 わきが臭を形づくるものは、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、アンモニア、揮発性ステロイド、などと言われていますが、人によつてその成分も混合比も全く違い、その人の嗅覚の働きによっても違います。 「わきが臭」を特異的に感じる人や「わきが臭」を全く感じられない人もいるくらいです。 ですから、一口に「わきが臭」といってもどのようなニオイかを定義をすることが難しいのです。 「わきが」とか「腋臭」と言う言葉を使うこと自体、混乱の元で悩みを増長される原因ともなります。 だからこそ、わたしは「わきがとはアポクリン腺がある一定以上存在し、そのニオイに悩んでいる人」と臨床上「悩みの解決」に結びつくような定義をしたのです。 なぜなら、ニオイの定義は難しくても、「いわゆるわきが臭」がアポクリン腺が原因であることは明白だからです。 このような定義をすると次のような人を手術の適応から除外でき、無用な手術を避けることが可能になります。 それは、アポクリン腺のニオイはかすかにあるものの、エクリン腺のニオイを主体に気にしている人、つまり「エクリン腺をメインにしている複合臭」を「わきが臭」と嗅いでいる人です。 そして、エクリン腺単独のニオイを「わきが臭」と誤認している人です。 複合臭であるからには、例え手術でアポクリン腺のニオイが完全に無くなったとしても、残存したエクリン腺単独のニオイを「わきが臭」と感じたり、新たな違うニオイとして感じることもありえます。 エクリン腺のニオイをメインとなる複合臭を「わきが臭」と感じている人やエクリン腺単独のニオイを「わきが臭」と誤認する人が、そのような誤解をするのには二つの理由があります。 一つは、人間の体で汗が「こもる場所」は、エクリン腺の成分が濃縮して他の体のエクリン腺のニオイと異なるニオイになるからです。 そのような場所は、3つあります。 まず、足です。足はアポクリン腺は一粒もないにもかかわらず、他の汗のニオイとは明らかに異なります。 次が、股。そして最も汗がこもるのが「腋の下」なのです。 二つ目は、腋の下の細菌叢が他の体表とは異なるからです。 腋の下は、通常の表皮ブドウ球菌などだけでなく、ジフテロイド菌やコリネバクテリウムと言った特異的な細菌が棲息している場所なのです。 これらの菌はアポクリン腺がなくなっても、腋の下に残るエクリン腺の汗とも当然かかわり、他の体表の汗のニオイとは異なるニオイを作ります。 ですからそのような人では、手術でアポクリン腺を完全に取り除けば当然「アポクリン腺臭」は完全になくなるはずですが、その人にとって「わきが臭」がなくなるとは限らないのです。 ときには稀ですが「違うニオイ」が新たに生じたと感じることさえあるのです。 そのような曖昧さが人間の嗅覚の性質でもあるのです。 しかし、複合臭であっても、エク腺とアポ腺のニオイの違いを明確に区別できる人(正確に言えばアポ臭を明確に識別できる人)は、そのようなことは起こりません。 その人にとつては、「アポ臭=わきが臭」と正確に認識していますので、 アポ腺が完全に摘出されれば、当然アポ臭が無くなるわけですから、そこに例えエクリン腺のニオイがの残ったとしても、その人にとっては「アポ臭=わきが臭」を知覚することはもうないからです。 わきが臭こそ他人に嫌われるニオイなのですから、誰にでもあるエクリン腺のニオイを気にする理由は何も無いのです。 かくして、アポ臭を明確に区別できる人は、手術によって完全に悩みが解消することが出来るのです。 めぐさん。 かなり複雑な内容ですが、理解できたでしょうか。 人が臭いを明確に区別できるのは、必ずしもその人のアポクリン腺の量に比例するわけではなく、嗅覚という受け手の要因に大きく依存するのです。 例え、「エクリン腺をメインにした混合臭」であっても、ニオイの識別能が高く、アポクリン腺のニオイが明確に嗅げる人は、 少量のアポクリン腺のニオイでも複合臭の中から「アポ臭」だけを「わきが臭」と嗅ぎ分けて自覚することができますし、 (あなたのケースがそうでしょう)、 識別能が低い人は、エクリン腺単独のニオイでさえ「わきが臭」と自覚することもあるのです。 つまり、体臭の問題とは「ニオイの側」の不確実性とそのニオイを「嗅ぐ側」の不確実性を併せ持っているのです。 ここがニオイの治療の難しいところであり、わたしが常に「わきが手術の適応」を慎重にしている所以なのです。
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