投稿者名:五味院長
タイトル:試験切開(五味式検査法)について
まめさん
遺伝関係や耳の中の毛の状態等の追加情報から総合的判断しますと、まめさんのケースは、「ワキガ」の可能性は低いようです。
むしろ「精神性発汗」によるエクリン腺の臭いの方を「ワキガ臭」ではないかと心配して悩まれているのではないかと思います。
しかし以上はあくまで自己診断法からの判定です。実際には、それでも万が一ワキガの臭いがしたらどうしようと「不安」は消えないこともあります。
そのような不安を完全に取り除くことができる診断法があれば悩める人々にとってどれだけ安心できることでしょうか。
それが、わたしが考案した「試験切開」(五味式検査法)です。
この試験切開を用いれば100%確実にワキガ体質かどうか、もしワキガ体質ならばどの程度の強さなのか診断が可能になります。
なぜなら、ワキガ臭の原因であるアポクリン腺は、ちょうどイクラの粒のようにハッキリと腋の下の皮下に確認することが出来るからです。
アポクリン腺の存在する「密度」によって、さらにアポクリン腺の「大きさ」や「タイプ」によってワキガの程度は一目瞭然と判定されます。
これ以上の確実な検査法はありません。 具体的には、腋下に最小限の麻酔をして中心部を1〜2ミリ程度の小さな切開を加えて、
皮下を直接観察するという本当に簡単な検査で、5分程度で終了し、痛みも全くありません。
この試験切開のは二つのメリットがあります。
一つは、患者さん自身のことです。臭いで悩める人は家族等に相談したとき、「気のせいだ」「考えすぎだ」「私には全く臭わない」等の返答をうけるのが普通です。
でもこれらは実際に悩んでいる本人にとっては「慰めているのではないか」という気持ちになるだけで、悩みの解決にはなりません。
臭いの悩みを解消するためには、「本人」が納得しなければならないのです。
そこに「試験切開」の有効性があるのです。 ワキガの原因であるアポクリン腺は、検査する医師のみならず、鏡で腋を映すことによって、検査される患者さん自身が本人の「目」で確認できるからです。
通常は、検査前に手術で摘出したワキガ症の人のアポクリン腺の実物を実際に見てもらいます。
それとの比較により自分のアポクリン腺の量つまりワキガ臭の程度がハッキリとわかるのです。
論より証拠、一見は百聞にしかず、です。これほど悩める人々にとって安心できる事実はありません。
もうひとつのメリットは、わたしたち治療者にとってです。
よく先生の手術法は再発がありませんから手術の後に「まだ臭う」と不満という患者さんはいないでしょうと他の医者仲間から質問されます。
でもそんなことはありません。実際にわたしのクリニックで手術された患者さんのなかにも“稀ですが”臭いが取れていないようだと訴えて来院される人はいます。
その原因のひとつに、その患者さんが元々気にしているのは「何の臭い」なのかの正しい診断がされずに手術をしてしまうことにあります。無論アポクリン腺が原因となる「ワキガ臭」を気にしている場合には、100%完全に悩みは解消します。しかしそれがエクリン腺の臭いや対人関係においての悩みであった場合には、エクリン腺は一部残るわけですし、他人の偶発的態度が無くなるわけではありませんから、その人にとっては術前と「同じ」臭いや「同じ」他人の態度があるわけです。
そのようなときだれでも「せっかく手術をしたのに治っていないのでは?」とがっかりするのはあたりまえのことです。
ですから、治療する側にとって患者さんが「どのような種類の臭いで悩んでいるのか」を術前に知ることは、医師と患者双方にとって大切なことなのです。
その方法の一つが「試験切開」です。
問診を通じてもあるていどは分かりますが、もし試験切開で、アポクリン腺が無かったり、少なかったりした場合には、それは手術の必要がないか、又は手術をしても患者さんが満足しない可能性があることを意味します。
そのような事実を術前に患者さんに教えてあげることもインフォームドコンセントの一つだと思います。
わたしのクリニックには、身体的条件の少ない人や対人関係の中で悩まれている人は、必ず「試験切開後手術」という方法をとります。つまり手術がいつでも出来るように準備をしてから、「試験切開」を行い、アポクリン腺量を確認して、その事実(ワキガ臭の程度)を患者さんに教えてあげ、患者さんの判断を待ちます。そこで手術を中止することもあれば、アポクリン腺がさほど多くはなくても手術に移行することもあります。
それは、患者さんの自己決定にまかせるのです。臭いの治療は「悩み」の治療と同義です。簡単な手術によって将来自信がついて積極的な前向きな生き方ができるようであるならその人にとってはどれほ大きな意味があることでしょう。
臭いの治療は悩みの治療という意味でわたしは五味クリニックの専門を「心療外科」と呼んでいるのです。
すこし長くなりましたが、試験切開が臭いの悩みの正しい解決のために有効な検査であることがお分かりいただけたでしょうか。今日本でわたしのクリニックだけしかこういった検査が行われていないのが不思議なくらいです。
試験切開が他の病院でもルーティーンに行われるようになることを願ってやみません。
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