わきが・体臭・多汗 ミニコラム
失禁のケア
五味クリニック院長
五味常明
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お年寄り、特に介護を受けている方にとって、失禁は、オシッコを漏らしたから汚いというだけではありません。 「こんなことをして周囲に迷惑をかけて申し訳ない。嫌われる。なさけない」といった否定的な感情につながります。
そのような気持ちにさせる原因の一つが、お漏らしの際の「悪臭」です。自分のニオイで他人に迷惑をかけるということほどつらいことはありません。ですから失禁を改善することは、お年寄りにとって人間の尊厳に関わる問題なのです。
しかし現状は、お年寄りの失禁は年だから、病気だから仕方ないと諦めて、おむつをあてがう、カテーテルを挿入するといった受け身の対応に流れがちです。
今回は、失禁した本人も、介護する側も双方ともに失禁のニオイで悩まないケアを考えましょう。
お漏らしした場合にそれがどのような種類の失禁のタイプなのかを知ることが大切です。まず治療によって治せるものかどうかの判断から始めます。
たえず尿がチョロチョロ出ているケースがあります。これは前立腺肥大や神経の異常、尿路系の腫瘍などで尿の通りが悪く残尿が多くなって膀胱が伸びてしまったことによります。ここでさらに下腹部が硬く突き出たようになるなら早めに治療が必要です。これは「溢流性尿失禁」といいます。適切な治療で防ぐことができます。
しかし、高齢者の失禁で多いのは、老化や脳血管系の病気からくる麻痺のために膀胱に尿がためられなくなり、尿を我慢できずに漏らしてしまうタイプです。これを「切迫性尿失禁」といいます。
こちらの失禁は、介護の腕の見せ所です。
まず、「オシッコをしたい」を感じてから実際に排泄できるまでの時間をできるだけ短くする環境を作りましょう。家を建て直して間取りを変えずとも、工夫次第でずいぶん変わるものです。
たとえば、移動式のトイレを居間の近くに置いたり、トイレの近くに寝起きするなどです。それからオシッコの時に衣服や下着を脱ぐのに手間をとらない工夫も大事です。パジャマの股ぐりのあたりを、マジックで開閉できるようにするといった具合です。
誰だって、オシッコぐらいは他人の世話にならずに自分でしたいものです。その気持ちを尊重して環境を整えてください。
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