わきが・体臭・多汗 ミニコラム
高齢者の体臭と食べ物
五味クリニック院長
五味常明
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いつかの冬の日の午後、日だまりの縁側でおじいちゃんやおばあちゃんに膝枕してもらった記憶はありませんか?
他愛ない話のやりとりに、いつの間にやら祖父の着物に顔をうずめてウトウトすると、生まれる前から知っていたような懐かしいニオイがして、いまでもたまに古い箪笥など開くと、ずいぶん昔のはずの光景が、昨日のように思い出されます。
人の一生を昔の人は「青春、朱夏、白秋、玄冬」と表現しました。人生のステージを、四季と色に喩えた古人の感性には感服するばかりですが、これは各年代に特有のニオイにも当てはまるように思えます。
若い盛りの、むせ返るような体臭は、まさに「春の青」そのものです。家庭を支える働き盛りの人のイメージは汗まみれの真っ赤な夏の太陽であり、老いを迎えれば、それはまた老人ならではの匂いになるものですが、人生最後のステージを「黒」とせず、幾重にも色を塗り重ねて落ち着いた「玄」とした言葉の妙には思わず膝を打ちたくなります。
しかし私にとっては懐かしい高齢者のニオイも、たとえばお年寄りの介護の現場などでは、そうとばかりも言っていられないようです。
社会の清潔志向が進み、高齢者層にも「においイコール不潔」のイメージから、自分の体臭を気にする人が増加しています。
訪問介護のヘルパーが、急に窓を開けた。鼻に手をやり咳き込んだ。などのしぐさがすべて自分の体臭に原因があると思いこみ、閉じこもってしまったなどの例もあります。
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