わきが・体臭・多汗 ミニコラム
オジサンのニオイの正体
五味クリニック院長
五味常明
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最近、化粧品メーカー「資生堂」が、中高年特有の体臭のもととなる物質「ノミネール」と、そのニオイの発生の仕組みを発見したと発表しました。この成果を生かした消臭効果のある化粧品が「ケアガーデン」です。
資生堂は、二十代から七十代の男女約二十人に同じポロシャツを三晩パジャマ代わりに着てもらい、そこから出るニオイ成分を分析した結果、二十代、三十代にはまったくなく、四十代の中年期から目立ち始めるニオイ「加齢臭」が、ノネナールというアルデヒドであることを突き止めたのです。
このノネナールの発生の仕組みを簡単に説明しましょう。
体には、皮膚のうるおいを保つ皮脂を分泌する皮脂腺があります。中高年の皮脂の中には「9―ヘキサデセン酸」と呼ばれる脂肪酸が増加します。同時に過酸化脂質も増加します。皮脂がこの過酸化脂質と出会うことにより、脂肪酸が連鎖的に酸化分解されさまざまな低級脂肪酸などのニオイ物質になり、その一つがノネナールなのです。
この発見で重要なことは、過酸化脂質の酸化作用がニオイの発生に関わっていることを初めて示した点です。従来体臭は、ニオイのもととなる物質が皮膚表面で常在菌によって分解される経路が中心だと思われていました。しかしこの経路をシャットアウトする消臭法は、常在菌を減らすこと、つまり殺菌が必要です。
ところが皮膚に住みついている常在菌は私たちの身体には必要な菌なのです。仮にこれらの菌がなくなると、もっと強い雑菌が繁殖したり、カビが増殖したり不都合が生じます。
つまり体臭を抑えるために常在菌を抑制すると、他の雑菌が増加して、その雑菌がニオイ物質を分解して、よりいっそう体臭が強くなるというジレンマに陥るのです。
体臭の発生における「過酸化脂質の酸化」ルートの発見は、脂肪酸の酸化分解を防ぐことで皮膚表面の細菌叢のバランスを乱すことなくニオイを抑制することができる点で画期的なのです。
実際ケアガーデンシリーズには、脂肪酸の酸化を防ぐ抗酸化剤に柑橘系の香りを組み合わせて抗菌剤の使用を少な目に配合しているようです。
さて、ここで私が注目することがあります。
それは、ノネナールの生成における「過酸化脂質」の関与です。そしてこの過酸化脂質は、不安定で他の分子と反応しやすいフリーラジカルという物質が脂質と反応し酸化させることによって生じることが多いのです。
ではどのようなときに、このフリーラジカルは増加するのか。
ずばり「老化」です。
なんのことはありません。加齢臭の強い人とは、年齢よりからだが老化している人なのです。
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