わきが・体臭・多汗 ミニコラム
便のニオイの原因
五味クリニック院長
五味常明
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便のニオイの原因について、たとえばあなたが食べたものが、どんな条件で腐敗臭を出す便になるのか、その悪しきパターンを紹介しましょう。
臭いの原因(1)
まず、よく噛まずにすぐ飲み込んでしまう人。これは臭い便への第一歩です。食べ物は、消化されてこそ吸収されるものです。消化されなかった食べ物は、腐敗のための材料でしかありません。消化の第一段階は口の中です。唾液に含まれるアミラーゼやリバーゼなどの酵素は、消化を助けるだけでなく、口の中の雑菌を殺してくれます。よく噛んで、たくさんの唾液を出してから飲み込んでください。
臭いの原因(2)
つぎに、ストレスのある人も臭います。食べ物が飲み込まれて胃にはいると、そこには最強の消化酵素ペプシンが待ち構えていて、タンパク質をあっという間に消化します。
ところがペプシンはストレスがあるとうまく分泌されません。食べ物が胃の中にあるときにペプシンが出なかったり、逆に空腹の時にたくさん分泌されたりと、ギクシャクします。
やがて食べ物は十二指腸を通り、その先の小腸であらかた消化吸収されるのですが、ストレスは小腸の動きにもブレーキをかけて「蠕動」を止めてしまいます。
食べ物が腸のなかでモタモタし始めると、つまり便秘ですが、それだけで腐敗が進み、悪臭も強くなるのです。
臭いの原因(3)
第三は、腸が汚れている場合です。とりわけ大腸の汚れには、有害な細菌がたくさん棲みついています。もちろん健康な人の大腸にも細菌はいます。
数え切れないほど、といっても誰かが計算したところでは、百種類の細菌が合計百兆個いると言われています。いてもよいのです。
問題は、その百種類の細菌の顔ぶれです。細菌がみな悪玉ではありません。人間に欠かせない細菌もいます。
そのような細菌を善玉菌と言って、たとえばビフィズス菌などが代表格です。ビフィズス菌が腸で一定の割合を占めていれば、ウエルシュ菌や大腸菌などを抑えてくれるので、さしもの悪玉も大きな顔ができません。
ところがビフィズス菌が減ってくると、一気に悪玉菌がのし上がります。その結果、腸の中でまだ消化されていないタンパク質やアミノ酸が分解されて有害物質を作り出します。アンモニア、インドール、スカトール、硫化水素…そう、冒頭に出てきた悪臭の面々です。しかも悪臭だけでなく、血圧を変動させたり、白血球の仕事を邪魔して炎症を起こしたり、さらには発癌性の物質にもなるのです。
逆に考えれば、便の悪臭が強いときは、腸が汚れて、その中で悪玉菌が増えているということです。便のニオイは健康のバロメーターと言えましょう。
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