わきが・体臭・多汗 ミニコラム
ニオイを感じる仕組み
五味クリニック院長
五味常明
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今年のゴールデンウイークも多くの方が旅行に出かけたことでしょう。旅先でのいろいろな思い出の中には匂いに関わるものもあったでしょう。
胸に溢れる若葉の香り。心に碧く浸みる磯の香り、はたまたエキゾチックな異国の香りでしょうか。憧れの地を訪れたときの最初の匂いは、旅の情緒をいやがうえにも盛り上げてくれる食前酒のようなものですね。今回は、知っているようで知らない、ニオイや嗅覚の話です。
旅先で、特に外国で、地元の人の食べ物の匂いが、どうにも自分の好みと合わなくて馴染めなかった。そんな経験はありませんか。同じニオイなのにどうして人によって、こうも好き嫌いが極端にまで分かれるのでしょうか。それは私たちの脳がニオイを判定する仕組みに関わっているからです。
私たちが息を吸うと、空気と一緒にニオイの分子が鼻に入り、鼻の粘膜にある嗅細胞を刺激します。その刺激は一種の電気信号となって、まずは「嗅球」という嗅覚の中枢に至ります。この嗅球は、大脳の一部が膨れ出たようなところですが、ここではまだ嗅ぎとったニオイを快とも不快とも判断しません。そのようなニオイの質を自覚するのは、さきほどの電気信号がさらに「大脳皮質」に届いてからのことです。
この大脳皮質には、生まれ育った環境や、様々な経験、身についた文化、体調などいわゆる後天的な情報がぎっしり詰まっています。その複雑な情報をもとに、ニオイの電気信号を快とか不快とか判断するのです。たとえば同じチーズの匂いに、うっとりする人もいれば眉をひそめる人もいるというのは、育った環境が違うために大脳皮質の情報の中身も量も違ってくるからなのです。
生まれたばかりで情報が少ない一、二歳の乳幼児は、大便のニオイすら不快には感じません。嫌な臭いというのもまた、人間が育つ文化的な環境に大きく影響を受けるのです。
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