わきが・体臭・多汗 ミニコラム
ヒトはなぜ悩むのか?
五味クリニック院長
五味常明
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体臭に限らず、そもそもどうして人間は悩むのか?
そんな素朴な疑問を皆さんと考えてみたいのです。私たち人間の心の淵を、興味津々覗いてみようではありませんか。
読者の方でなーんの悩みもないなどというおめでたい人はいないでしょう。
なぜなら、人は誰しも「なにかをしたい」という欲求を持っています。様々な欲求は目的を生み、生きるエネルギーになります。しかし逆に、欲求が満たされない場合には欲求不満になり悩みに転じてしまいます。
この欲求不満と悩みの関係は、いわばコインの裏表、似ているけれどイコールではありません。
では、どう違うのか?
動物に例えればよくわかります。動物にも欲求不満はありますが悩みはありません。何日も餌にありつけないノラ猫は欲求不満になるでしょう。
しかし、猫は悩みません。
「最近は不景気で残飯まで少ないニャー。子供が七匹も産まれたばかりなのに、この先どうなるのかニャー……」などと嘆いたりしないのです。
そこで人間はといいますと、これが必ずしも一様ではありません。欲求不満のある人が皆悩むとは限らないのです。では誰が悩むのでしょうか?
結論から申し上げれば、それは、他人や社会のことを大切に考える人です。「他人や社会に不快な思いをさせてはいけない」そう考える人ほど外部に対して心のなかで葛藤が生まれ、さらにその葛藤によって悩みが生まれるのです。逆に「私は私よ関係ないわ」という人に葛藤は生まれません。悩みもありません。他者と自分とのつながり、しがらみを強く意識し、深くはまったところから悩みは始まります。あなたが今悩んでいるとしたら、それはあなたが他人や社会と自分との関係をまじめに考えていることの証なのです。
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