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 耳垢によるわきが判定法


投稿者名: まめ

タイトル:耳垢について


 

初めまして、23歳の女性です。

 

ワキガ、多汗症であるかの自己診断の項目で耳垢が軟らかいかというのがありますが、これは常にどんな状態でもなのでしょうか?

普段リラックスしているときやちょっと手足に汗をかいた程度なら耳垢はパサパサなのですが、酷く緊張して汗を長い時間かいた状態の時や暑くて汗をかいた日は耳垢が軟らかいです。

あと、自分自身がワキガ体質なのか気になります。

脇毛は脱毛でちょっと太い産毛程度になってはいますが、元々は 濃い方です(一つの毛穴から2本というのもありました)。

遺伝はないです。耳垢は上記の通りです。シャツの黄ばみなどは ありません。洋服に臭いが付いたり、鼻を近づけても臭いません。 ただ、ティッシュなどで脇をふき取って鼻をティッシュに付くぐらい 近づけたらワキガ独特の臭いがしたことが1,2回、ワキガとはちょっと 違う感じの臭いがしたことも何回かありました。

 

あと、手足がすぐ発汗しやすいのもちょっと悩んでいます。

私はワキガ体質なのでしょうか?

 

投稿者名:五味院長

タイトル:耳垢の判定法について


 

まめさん

 

ワキガの自己診断の中でも「耳垢」の状態が最も信頼度の高い指標となりますので、ここで詳しく説明します。

通常エクリン腺の存在しない外耳道が湿っているということは、もうひとつの汗腺であるアポクリン腺からの汗が原因であり、耳の中にもアポクリン腺の瘢痕(瘢痕ですから耳が臭うわけではありません)が存在するということの証明となります。

アポクリン腺が外耳道にあるということは、一般的に体の中で最もアポクリン腺が多い場所である腋の下にも多くのアポクリン腺がある、つまりワキガ体質ということが類推できるのです。

 

この判定法はかなり精度が高くわたしのクリニックでの統計ではほぼ9割以上の確率でした。

ただ、問題は「逆は必ずしも真でない」ということです。つまり耳垢が軟らかくなく乾燥していれば「ワキガ体質ではない」という証明にはならないということです。

耳垢がパサパサしている人でも実際に手術をしてみるとアポクリン腺がかなりたくさんあるということもしばしば経験することです。

また、耳垢の軟らかさの程度とワキガ体質の強さとの関係ですが、一般的には 相関しているようです。

アポクリン腺の活動は前回お話したようにある一定の休止期間がありますので いつも湿っているわけではないのですが、耳垢の湿っている時間の長さもワキガの程度と関係があるようです。

湿り気の判断ですが、風呂上りや運動後、外気温が急激な変化、精神的に興奮や緊張をした場合には、アポクリン腺の活動を刺激したり、外耳の外側にあるエクリン腺の汗と混ざり合ってしまいますので、普段の状態で綿棒でそっとこするようにして判定してください。

通常、毎日耳の掃除をしていても綿棒に湿った耳垢が付くようでしたらほぼ間違いなくわきが体質といえるでしょう。

 

さて、まめさんのケースですが、あなたの場合には「強いワキガ体質」とは考えにくいようです。

その理由は、まず耳垢が「絶えず」軟らかくはないこと。洋服にまでは臭いが付着しないこと。下着に黄ばみがつかないことなどです。

あと、ご両親の耳垢が軟らかいか聞いてみてください。遺伝関係も重要な条件です。

 

腋毛の条件はあたっているようですが、一度誰かに外耳道にも太い毛があるかどうかを見てもらってください。

外耳がうぶ毛ていどなら腋毛の条件は該当しないと判断してよいでしょう。

以上を総合的に判断しますとあなたは「中等度以上のワキガではないが、他人に迷惑がかからない程度の軽いワキガの可能性もある」という判定が妥当ではないかと思います。

 

ただ、あなたの場合には、この上に「精神性発汗」による多汗が加わった状態ですので、時には「やや強く」感じるときもあるかもしれません。しかしこれも他人との関係では無視できるものでしょう。

 

以上ですが、前にもお話してように100%確実な診断は「試験切開」という簡単な検査をすることが必要です。

(試験切開についてはまた別な機会に詳しく説明します。)

 

投稿者名: まめ

タイトル:ありがとうございます&質問


 

お返事ありがとうございます。

 

> あと、ご両親の耳垢が軟らかいか聞いてみてください。遺伝関係も重要な条件です。

 

訊いてみたのですが、母親はいつもパサパサで父親はパサパサなときとちょっと軟らかい時があるようです。

体型や体質など父親に似ているので、耳垢が軟らかいときがあるのは遺伝も 原因の一つなのかなと思います。

耳毛は見てもらったのですが、太い毛が特に見あたらなかったのかよく 分からないと言われてしまいました。

綿棒でこすったときに産毛が付いてきたことがあったので、太い毛は無いのかなぁ、無いと良いなぁと思っています。

 

臭いに気づいてから、電車に乗るだけで緊張してしまっていたので、気を紛らわせるために本を読んで注意をそちらに向けるようにしてはいるのですが、 精神性発汗も抑えられるなら抑えたいです。

やはり気にしないようにすることが一番効果的なのでしょうか。

 

> 以上ですが、前にもお話してように100%確実な診断は「試験切開」という簡単な検査をすることが必要です。

 

この試験切開は具体的にどういうものなのか興味があるので、お時間があるときで 構いませんので詳しい説明が聞いてみたいです。よろしくお願いします。

 

 

投稿者名:五味院長

タイトル:試験切開(五味式検査法)について


 

まめさん

 

遺伝関係や耳の中の毛の状態等の追加情報から総合的判断しますと、まめさんのケースは、「ワキガ」の可能性は低いようです。

むしろ「精神性発汗」によるエクリン腺の臭いの方を「ワキガ臭」ではないかと心配して悩まれているのではないかと思います。

 

しかし以上はあくまで自己診断法からの判定です。実際には、それでも万が一ワキガの臭いがしたらどうしようと「不安」は消えないこともあります。

そのような不安を完全に取り除くことができる診断法があれば悩める人々にとってどれだけ安心できることでしょうか。

それが、わたしが考案した「試験切開」(五味式検査法)です。

この試験切開を用いれば100%確実にワキガ体質かどうか、もしワキガ体質ならばどの程度の強さなのか診断が可能になります。

なぜなら、ワキガ臭の原因であるアポクリン腺は、ちょうどイクラの粒のようにハッキリと腋の下の皮下に確認することが出来るからです。

 

アポクリン腺の存在する「密度」によって、さらにアポクリン腺の「大きさ」や「タイプ」によってワキガの程度は一目瞭然と判定されます。

これ以上の確実な検査法はありません。 具体的には、腋下に最小限の麻酔をして中心部を1〜2ミリ程度の小さな切開を加えて、

皮下を直接観察するという本当に簡単な検査で、5分程度で終了し、痛みも全くありません。

 

この試験切開のは二つのメリットがあります。

一つは、患者さん自身のことです。臭いで悩める人は家族等に相談したとき、「気のせいだ」「考えすぎだ」「私には全く臭わない」等の返答をうけるのが普通です。

でもこれらは実際に悩んでいる本人にとっては「慰めているのではないか」という気持ちになるだけで、悩みの解決にはなりません。 臭いの悩みを解消するためには、「本人」が納得しなければならないのです。

そこに「試験切開」の有効性があるのです。 ワキガの原因であるアポクリン腺は、検査する医師のみならず、鏡で腋を映すことによって、検査される患者さん自身が本人の「目」で確認できるからです。

通常は、検査前に手術で摘出したワキガ症の人のアポクリン腺の実物を実際に見てもらいます。

それとの比較により自分のアポクリン腺の量つまりワキガ臭の程度がハッキリとわかるのです。

論より証拠、一見は百聞にしかず、です。これほど悩める人々にとって安心できる事実はありません。

 

もうひとつのメリットは、わたしたち治療者にとってです。

よく先生の手術法は再発がありませんから手術の後に「まだ臭う」と不満という患者さんはいないでしょうと他の医者仲間から質問されます。

でもそんなことはありません。実際にわたしのクリニックで手術された患者さんのなかにも“稀ですが”臭いが取れていないようだと訴えて来院される人はいます。

 

その原因のひとつに、その患者さんが元々気にしているのは「何の臭い」なのかの正しい診断がされずに手術をしてしまうことにあります。無論アポクリン腺が原因となる「ワキガ臭」を気にしている場合には、100%完全に悩みは解消します。しかしそれがエクリン腺の臭いや対人関係においての悩みであった場合には、エクリン腺は一部残るわけですし、他人の偶発的態度が無くなるわけではありませんから、その人にとっては術前と「同じ」臭いや「同じ」他人の態度があるわけです。

そのようなときだれでも「せっかく手術をしたのに治っていないのでは?」とがっかりするのはあたりまえのことです。

ですから、治療する側にとって患者さんが「どのような種類の臭いで悩んでいるのか」を術前に知ることは、医師と患者双方にとって大切なことなのです。

 

その方法の一つが「試験切開」です。

問診を通じてもあるていどは分かりますが、もし試験切開で、アポクリン腺が無かったり、少なかったりした場合には、それは手術の必要がないか、又は手術をしても患者さんが満足しない可能性があることを意味します。

そのような事実を術前に患者さんに教えてあげることもインフォームドコンセントの一つだと思います。

わたしのクリニックには、身体的条件の少ない人や対人関係の中で悩まれている人は、必ず「試験切開後手術」という方法をとります。つまり手術がいつでも出来るように準備をしてから、「試験切開」を行い、アポクリン腺量を確認して、その事実(ワキガ臭の程度)を患者さんに教えてあげ、患者さんの判断を待ちます。そこで手術を中止することもあれば、アポクリン腺がさほど多くはなくても手術に移行することもあります。

それは、患者さんの自己決定にまかせるのです。臭いの治療は「悩み」の治療と同義です。簡単な手術によって将来自信がついて積極的な前向きな生き方ができるようであるならその人にとってはどれほ大きな意味があることでしょう。

臭いの治療は悩みの治療という意味でわたしは五味クリニックの専門を「心療外科」と呼んでいるのです。

 

すこし長くなりましたが、試験切開が臭いの悩みの正しい解決のために有効な検査であることがお分かりいただけたでしょうか。今日本でわたしのクリニックだけしかこういった検査が行われていないのが不思議なくらいです。

試験切開が他の病院でもルーティーンに行われるようになることを願ってやみません。

 

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