投稿者名:五味院長
タイトル:医療に「絶対」はありません
とよさん。
メール拝見しました。五味クリニックのHPを最初から最後まで読んでいただきありがとうございます。
HPのコンテンツは莫大な分量ですので、全部を読破するのは大変な作業だったのではないでしょうか。でもそのような努力されたこと自体に、あなたがどれだけわきが臭でなやまれいたかということ
がうかがわれます。
また、内容を信頼していただき、本当に嬉しいです。たしかに五味クリニックのHPは他の病院のものとは印象が違うとは思いますが、それはわたしがHPはできるだけ正確で「正直」な情報を記載する必要があると思うからです。個人のHPはどうしても自分をPRする内容になりがちですが、病院という公共的な役割のHPでは、長所だけでなく、同時にマイナス面も含め全ての情報を公正に提供すべきだと考えているからです。
そこで、まずあなたに言いたいことは、わたしの治療法を信頼してくださることは本当に嬉しいことですが、医療には「絶対」ということはないということです。
どんなに高名な外科の先生にとっても、例えば、初歩的な手術に思える虫垂炎の手術でも、癒着などしている場合など決して簡単な手術ではないのです。
同様なことがわきが手術についても言えます。
わたしの病院には外科の先生が手術の見学に来られますが、1回や2回の見学でマスターできるほど簡単ではないのです。
その理由は、ひとくちに「わきが」と言っても、人により、アポクリン腺の状態も千差万別だからです。例えば、皮膚の厚いも薄い人もいれば、アポクリン腺も大きく緩やかに皮膚に付着しているものから、小さくとも強く密着しているのもあり、時には副乳の組織がアポクリン腺に混在していることもあり、その時々で「剥離」の仕方を変えていかなければならないのです。
このようにわきが手術は、いわば職人芸のようなところがあり、だからこそ、器械より正確に、100%完全にアポクリン腺を摘出することが可能になるのです。
ここで知ってほしいことは、わたしがこのHPでいつも「100%完全に」と言っているのは「1粒も取り残さないように最大にして細心の注意をはらって」という意味であり「絶対に」ではありません。
時には、手術後「まだ匂うきがする」と言って来院する患者さんがいないわけではないのです。(最近は非常に稀ですが)
実は、わたしのクリニックには、わたしの後継者として、4年前から大学病院のりっぱな外科の先生が研 修に来ているのですが、わたしが見て「100%完全に」と思えるように摘出できるまでには3年以上かかっりました。5年近くかけてやっと一人前に出来るようになるのです。
そのような理由で、地方で直視下剥離法を完全に行う先生はまだいないのが現状です。
北海道でしたら、できれば手術日のみ東京にきていただき、あとの抜糸等の処置をこちで紹介する北海道の先生にお願いするという形をとることになります。
お子さんは、受け付けのスタッフが責任をもってお預かりします。
高校以来の悩みの解決のためですから、一日だけこちらに来院されることをお薦めいます。
最後に手術後のことですが、あなたのメールを拝見すると、この辺も「100%以上」に信頼しすぎている傾向もありますが、「術後の経過」についても同様なことが言えます。
つまり、傷の治り方についても人により非常に違うのです。
2週間で完全に閉鎖する人もいれば、1ヶ月以上かかる人もいます。
術後大事にする人と動きの激しい人では当然治り方も異なります。
動いて出血する人もいれば、稀には皮膚の常在菌が多いタイプの人では、化膿気味になることもあります。
(そのような場合にも、幸いなことに、腋の下という場所が非常に治りのよい部分ですので正しい消毒を続けることで自然に治癒しますが)
ご質問にもどりますが、このようにわきが手術が非常に個別性があることを理解できれば、わきがの治療は、できるだけわきがだけを専門(他の手術の片手間でなく)にされている先生を選ぶことが大切であることが理解できると思います。(わたしのところへどうぞとPRしているわけではありませんので誤解しないようにしてくださいね)
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