投稿者名:圭
タイトル:術後のわき以外の臭いについて
初めて投稿させていただきます。私はわきの臭いで悩んでいる30才、男性です。わきがの条件も全てあてはまるので、わきがだと思います。皮脂腺またはエクリン腺の臭いをわきがだと思い込んでることはありませんし、わき以外の体の部分からも不快な臭いはありません。 手術を考えているのですが、私が何よりも不安で疑問に思っていることは「術後に発生する可能性のある臭い」についてです。 術後のわきの臭いに関しては、掲示板上で他の方の質問に対する先生のお答えが「アポクリン腺を摘出したことで、違う汗腺が生じたり、エクリン腺の臭いが強くなることは医学的にありえません」という内容だったので、安心しました。 しかし、掲示板や過去ログの「術後の臭いについて」を見ると、わきがの手術後に、首・背中からわきがのような臭いや便臭、つまりわき以外の体の部分から手術前には臭わなかった新たな臭いが発生した人が複数おられました。 先生のお答えは、「他の病院で手術をしたため、悩んでいた臭いがアポクリン腺の臭いかどうかわからない、皮脂腺の臭いを悩んでいた可能性もある」や「術後に精神的なストレスがあったため、精神面と身体面の相乗効果で便臭を強く感じるようになった」ということでした。 しかし、この方達が「術後にわき以外の体の部分から新たな臭いが発生している」とおっしゃっているのは、過度の思い込みによるものではなく、事実、悩みになるほどの強い臭いが発生しているからなのだと思います。 また、以前からそういう臭いがあったにも拘わらず、気付いていなかったというわけでもないと思います。 ここで先生にお伺いしたいのですが、わきのアポクリン腺以外に特に不快な臭いが無い人がわきがの手術をしたことによって、掲示板で投稿されている方のような症状が発生するということはあるのでしょうか? つまり、「アポクリン腺を摘出したことで、違う汗腺が生じたり、エクリン腺の臭いが強くなることは医学的にありえません」というのは、わき以外の体の部分に関してもいえる事なのでしょうか? また、皮脂腺などの臭いの程度が手術前より強くなる事はあるのでしょうか? 長文になってしまい、申し訳ありません。 お忙しいところ恐れ入りますが、ご回答をよろしくお願い致します。
投稿者名:五味院長
タイトル:体臭の因果関係の証明について。
圭さん。 大変論理的なご質問ですので、あなたが知りたいことはよく理解できました。 結論を先に言いますと、腋臭の手術と腋以外の別な場所での体臭発生の因果関係は現代の医学では、否定も肯定もできません。 腋の下に関しては、わたし自身がもう20年以上もこの手術のみを行っていますので、経験的にも実証的にも以前にお話したことは事実です。 つまり「腋の下のアポクリン腺を摘出したことで、違う汗腺が生じたりエクリン腺のニオイが強くなるというようなことは医学的には起こりえません」 このことは汗腺の発生学的にも再手術による実証的証明によっても明らかです。 しかしです。 あるAさんが腋臭の手術後に別な場所の体臭が気になるという場合には、現代の医学では、否定も肯定もどちらの証明も不可能です。 まず、因果関係をどう説明するかです。 手術後に何か他の症状が発生するということはよくあることです。 例えば、虫垂炎の手術後に便秘がひどくなったとか、扁桃腺の手術後に風邪をひきやすくなったというような場合です。 このようなケースでは、因果関係が無いとは言えませんし、医学的な説明も可能です。 でも、扁桃腺の手術をしてから便秘がひどくなったという場合はどうでしょうか? または、虫垂炎の手術をしてから風邪をひきやすくなったという場合はどうでしょうか? これらの因果関係の証明は困難です。 手術後にお医者さんにそのようなことを訴えても、通常は「常識的」に 「そのようなことはありません」と軽くあしらわれるでしょう。 でも、Bさんが手術の前には下痢気味だったのに手術の後急に便秘になったのだから手術のせいに違いないと信じ込んだならば、だれもBさんの気持ちを否定することはできないでしょう。 つまり、ある現象の医学的因果関係の証明にはエビデンスが必要ですが、 日常生活の中で生きている私達にとっては「現象」こそエビデンスなのです。 同じことが腋臭の手術についても言えます。 「手術後に別な場所に別なニオイがする」という「現象」を信じている人にとって、医師はそのことを否定はできないのです。 (勿論全ての医師は常識的にそのようなことはありえないと信じていますが) そこでわたしの意見です。 20年以上体臭多汗の治療に従事してきたわたしの個人的意見ですが、 やはり腋臭については、「悩みの強さ」が全てだと思います。 手術は本当に悩んでいる人だけ受けるべきです。 手術によって、「腋臭の悩み」が解消することで、将来、積極的で前向きで有意義な人生をおくりたいと心から願う人だけが受けるべきです。 少しでも、手術に「不安」や「疑問」があるなら少なくとも「今」は手術療法を選択せず、デオドラント剤などで一時的に対応すべきだと思います。 圭さん。以上はあくまでわたしの個人的な考えです。 わたしは、手術を引き受けた患者さんの1%の人でも不満なら落ち込んでしまう性格なので少し偏っているかもしれません。 他の考えもあるでしょう。ぜひ他の病院で他の先生の意見も聞いてみてください。 そして、その内容をぜひこの掲示板で教えてください。
タイトル:Re: 体臭の因果関係の証明について。
お忙しいところ早速のご返答ありがとうございます。 「医学的に否定も肯定もできない」「常識的にありえないと考えている」という先生のお答えに、何の疑問も持たず、素直に納得できました。 術後に新たな臭いで悩んでいる人が実際におられるので、自分にも起こりえることだと思うと不安は残りますが、先生のお答えを拝見して、手術を前向きに考えられるようになりました。 「そのようなことは医学的にありえない」とはっきりおっしゃっているわけではないのに、手術を前向きに考えられるのは、私が先生を信頼しているからだと思います。 > 他の考えもあるでしょう。ぜひ他の病院で他の先生の意見も聞いてみてください。 こちらについては、信頼している五味先生のご意見だけで十分です。 手術法に関しても「確実にアポ腺を取る」というのは勿論ですが、「余計な部分は極力取らない」というところで、私は五味先生がベストだと確信しました。 皮膚の回復をよくするかしないかは(回復が早いか遅いかは)、ここで決まると思うからです。 時間ができ次第、まずはカウンセリングをお願いしようと思います。 ありがとうございました。
タイトル:信頼していただき感謝しています。
圭さん。 わたしの回答を、本当に深く読んでいただきありがとうございました。 わたしの意図をこれだけ理解していただくと、この掲示板を続けてきた甲斐があります。 また、わたしを信頼していただき、いまさらながらその信頼に応えなければと心を新たにしました。 ところで、圭さんならきっと体臭の治療の本当の難しさを理解してくれるのではないかと思いこの書き込みをしたのですが、 「憩いの広場」に今日メッセージをされた方は、非常に辛い立場にあります。もしよろしかったら読んでみてください。 詳しい情報は、まだカルテを照会していませんので不明ですが、1年前わたしが「腋臭の悩み」ということで手術をした患者さんです。 読まれると分かりますが、圭さんの質問された「腋臭の手術と別なニオイの関係」とはまた別な次元の体臭の悩みなのです。 この方は「再発」とか「別なニオイの出現」といった問題よりさらに、わたしたちが真剣に対応してあげなければならない人です。 全人格的配慮をしてあげなければならない人です。 わたしが手術を受けたのが適切であったかはまだ不明です。 幸い、わたしのことを信じてくださっているようですので、これからの治療の前提となる医師と患者間の信頼関係はしっかりしています。 この点だけは、いつもわたしの患者さんには感謝しています。 今回の圭さんの返答からまた彼の投稿からも、 医療でもっとも大切なものは、患者さんと医師の間の「信頼」であることを痛感しました。 本当にありがとうございました。 しかし、「体臭の治療」とはこのように本当に奥の深い問題も含んでいるものなのです。このことも痛感しました。
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