投稿者名:五味院長
タイトル:手術に対する疑問
ひろみさん。
ひろみさんのような質問を、長く待っていたのですよ。
これは全ての手術に言えることですが、最も優先されねばならないことは「安全性」です。
いかに手術の結果がすばらしくとも、その過程に安全性が保証されなければ正しい手術とは言えません。
あなたの言う「機能障害」についても同じです。
実はわたしが体臭多汗手術の開発で、最も力を入れたのは、
「問題となるアポクリン腺のみを再発のないようにいかに取るか」
ということだったのです。
アポクリン腺は、日本人の場合、ほとんどない人が多いのですから、完全に取り除いても機能に影響はありません。
幸いなことに、アポクリン腺は皮下の脂肪層と皮膜できれいに分けられていて、その脂肪層のはるか下に神経や血管があるのです。
わたしが、目を付けたのはまずそこです。
つまり、アポクリン腺層と脂肪層とを分かつ皮膜に沿ってきれいに剥離できれば、全く神経や血管を傷つけなように手術ができるのです。
この点が「直視下手術」の最大の長所なのです。
器械的方法では、ブラインド手術のためこの皮膜にうまく器械をいれることができず、時に深く入りすぎた場合には神経などをいためてしまうこともありえるのです。
次に汗の質問ですが、あなたが手術で減った汗はどこにいくのか、汗をかかなくても平気なのかという疑問を持つのは当然です。
まず、アポクリン腺からの汗はこれは体温調節に関与していませんから完全に摘出しても問題はありません。
エクリン腺の方は、体温調節に必要な汗腺です。しかし体臭多汗の手術で取れるエクリン腺は全部ではなく、一部は真皮の中に残りますから、手術後何も汗をかかないわけではありません。
例えば全身やけどで、体の30%以上の汗腺が障害されても体温調節は十分におこなわれるほど汗腺は柔軟なものですから、わきの一部のエクリン腺が取り除かれても機能には影響はありません。
勿論、汗はその汗腺が出していた量だけ減るのですから、他の場所が増えるようなことはありません。そこが神経ブロックで神経節を切除した場合の「代償性発汗」とワキの手術の場合との違いです。
術後のむくみですが、まれに腕にむくみ感を訴える人もいますが、これはタイオーバーで圧迫していたためのものですから、数ヶ月たって皮膚が軟らかくなれば自然に消滅してしまいます。
手術後の痛みのついては、タイオーバーの固定に突っ張る痛さはありますが、これは入院の代わりですから我慢していただきたいと思います。
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