| 投稿者名:五味院長 タイトル:精神性発汗型多汗の手術法 
               
    みーさん    ワキの下の精神性発汗型多汗の治療法には3通りあります。  一つは、精神分析、ロゴセラピー、自律訓練法等の精神療法です。  二つめは、制汗剤、イオントフォレーシス等の物理療法や抗コリン剤や精神安定剤等の薬物療法です。  そして、3番目が手術療法です。    今回は、まず手術療法を説明します。  まずワキの精神性発汗型多汗に手術をお薦めできるのは次のようなケースの人です。  1. 精神療法が全く無効であった人  2. 精神療法を行う時間的余裕が無い人  3. ある程度でもよいから短時間でワキの汗を減らしたい人  4. ある程度でも汗が減ったという事実によって自信が回復し、そのことが社会生活上にプラスに働く人  5. ワキガ型多汗との混合型の人  6. 副乳多汗症との混合型の人(副乳多汗症については別に説明します)    これらの人は、手術療法を選択する価値があります。なぜなら精神療法は、時に多大な努力と時間を要することが多く、また一部の人には期待したほどの効果がなく、その結果に失望して自信を失ってしまうこともあるからです。 
             逆に「ある程度でもよい」という控えめな要求水準の人にとっては手術による半分程度の減汗効果でも喜びは相対的に大きく、その事実が日常生活の不安を軽減して安心感をもたらし、実際の手術の効果以上に汗が減ることも期待できるからです。 
               しかし、精神性発汗型多汗の手術療法の減汗効果は、実際には40%から60%程度のバラツキがあります。  これは、発汗の減少がエクリン腺の切除された量だけでによるわけではなく、その人の性格や考え方にも影響されるからです。 
               精神性発汗型多汗の手術療法は、ワキガ型多汗の手術と基本的には同じですが、次の二つの点がポイントになります。 
             まず、エクリン腺が主にふくまれる皮膚の真皮層の剥離の厚さをワキガ型より多くすることです。つまり、皮膚がより薄くなるように剥離することによって削除されるエクリン腺の量をより多くします。 
             また、ワキガ型の場合には、脇下の有毛部だけが手術野ですが、エクリン腺はその周辺にも多数存在していますので、剥離の範囲をより広くすることです。 
             以上のようにワキの下の多汗といってもワキガタイプと精神性発汗タイプさらに副乳多汗症とでは、手術法も減汗効果も異なります。(ワキガ型では70%から90%の汗が減ります) 
               ここでまず大切まことは、正しい診断です。正しい診断によって正確な減汗量が推定できるのです。  このようなタイプを区別しないままに手術をした場合には、患者さんの期待と手術の効果とが一致しないことになり患者さんの不満をまねくことにもなります。  しかし、わたしが精神性発汗の人に勧めるのは、最初から手術でなくまず自律訓練法等の精神療法をしてみることです。 
             精神療法を(苦労して?)行った患者さんなら、手術によって50%前後でも汗が減ることは非常な喜びであり、そのような気持ちがさらに精神的に安定を呼び、さらに汗が減るという好循環を招くことが出来るからです。 
               そこで、次回は「精神療法」について説明します。(少し疲れましたので)  |