投稿者名:五味院長
タイトル:素朴な疑問が大切です
ばくさん
あなたの質問は素朴ではありますが、医学的には大切な要点を含んでいるのです。
それは、「腋臭とはなにか」「ワキガとはなにか」という根本的な定義の問題です。
たぶん、この質問は医師に聞いたとしても答えられない人がほとんどではないかと思います。
正直にいってわたし自身も正確には答えられません。
医学事典を見ても「腋下部の汗が悪臭を放つもの」というようないいかげんな定義なのです。
しかし、臭いで悩んでいる人を救うための医学ではこのようないいかげんな定義ではダメです。医学的には、治療のメルクマールになるような定義が必要なのです。
そこでわたし自身は、ワキガを次のように定義しています。
「腋臭(ワキガ)とは、腋下部にアポクリン腺という汗腺が存在し、その汗腺が発する臭いを本人が明確に自覚して、悩んでいる状態」です。
ワキガ臭であるなら、まずアポクリン腺が必ず存在という条件がなければなりません。アポクリン腺が1粒もないのにもかかわらず腋の臭い(エクリン腺等の)で悩んでいる人はワキガ症とはいわないのです。
この場合には直接的な治療法がありません。(カウンセリング等は有効ですが) 逆にいえば、アポクリン腺が大量にあっても本人がその臭いで悩んでいなければ医学的にはワキガとも言いにくいのです。なぜなら、その場合にも治療の対象にならないからです。
それでは、アポクリン腺が多くはないが(人が分かるほどではないが)多少のアポクリン腺の臭いを本人が自覚し、そのことで悩んでいる場合にはどうでしょうか?
わたしは、このようなケースはワキガ症と呼ぶことにしています。
なぜなら、その場合には正しい治療法の選択によって本人の悩みを完全に解決することができるからです。
つまり、かりにその人がほんの少しであっても「ワキガの特殊な臭い」のことを嗅ぎわけてその臭いで悩んでいるなら、それは次の二つの方法のどれかで悩みが解消するからです。
そのひとつは、前に説明した「試験切開」という検査をすることです。自分自身でもアポクリン腺量を確認することができることが、自信と安心を与えます。
また、本人の希望により手術になった場合でも、ワキガ臭そのものがなくなることの自覚することによって、また摘出したアポクリン腺の量を他のワキガ体質の強い患者さんのものと比較することによっても自信と安心を得て悩みは自然と解消されてゆくのです。
このように、医学的定義というものは、治療に役に立たなければ意味がありません。わたしの定義からは一つの大切な結論が導きだせるのです。
それは、「ワキガ(脇臭)であれば必ず治る」ということです。 つまり、ワキガと診断されたならその時点で悩みの解決が保証されたも同然です。
言いかえれば、もうワキガという状態で悩む必要は全く無いということです。
おわかりいただけたでしょうか?
あなたの素朴な質問にはこのような深い意味があったのです。
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