投稿者名:五味院長
タイトル:見守ってあげてください
まま様
娘さんが将来体臭に悩んで、性格や友人関係にまで影響するのではないかとご心配するお母さんの気持ちはよくわかります。
また、もし今現在すでに悩み始めているならよき相談相手になってやりたというお気持ちもわかります。
また、同時にそのような話題をどう切り出したらよいかや今が適切な時期なのか迷う気持ちもわかります。
さらに、そのような話題をご主人が真剣に取り合ってくれない孤独なお気持ちもわかります。
でもわたしは、医学的な回答をする前にお母さんには次のようなことお話したいと思います。 それは、お母さんの「悩み」を娘さんに植え付けないでほしいということです。
娘さんは、お母さんの「分身」ではあるけれどお母さん「自身」ではありません。彼女はもう中学1年生です。まだ大人ではないけれど、自分の自我を捜し求めていく大切な時期です。
自分のアイデンティティーを見つけるためには、自分自身で目の前の壁を乗り越えていく勇気も必要です。
自分の悩みを自分で解決していく過程や時間も必要なのです。
そのような悩みの経験を通じて自分で自分の問題を解決していく力強さを身につけるのです。
お母さんのような愛情豊かな母親から育てられた子ならば、きっとその力をつけるためのエネルギーはすでに育まれているはずです。
そこでお母さんへのアドバイズですが、今は娘さんに「わきが」の話題はもち出さず、そっと「見守って」あげてください。
でも「放っとく」とも「見張る」ともちがいますよ。
娘さんのあるがままを受け止めることです。
甘えたい、泣きたい、嬉しい、感動した、悲しい、辛い、そのときどきにあるがままをうけとめるのです。
この時期の子供は、例えわきがで悩んでいてもそのような気持ちを親に隠したいこともあるでしょう。悩みを押しこらえて明るく振舞うこともあるでしょう。
そのようなことも全て含めて「見守って」あげるなら、将来のある日、突然、何気なく、そしてごく自然に、お母さんにこんな風なことを打ち明けるることでしょう。
「わたし体臭を治したいんだけど、相談にのってくれる?」
お母さんの出番はその時です。
しかしお母さん。「待ってました」とばかりに「それじゃすぐに手術を」なんて言ってはダメですよ。
まず、お母さんはじっくりと娘さんの話を「傾聴」することです。
彼女の気持ちを心と体全体で聞くのです。受容するのです。
もしかして、娘さんは今までだれににも言えなかった胸の内をお母さんに打ち明けたことで、悩みの半分は解消するかもしれません。
もしかして、お母さんの適切なアドバイスで自分が悩まなければいけないのは「体臭」よりもっと他のことにあることにも気がつくかもしれません。
もしかして、じぶんから手術を希望して、臭いの悩みから開放された新しい自分を目指すかもしれません。
そのときこそ、ぜひわたしのところに連れてきてください。わたしが責任をもって手術をお引き受けましょう。
さて、前置きが長くなりましたが、結論を言えば今は手術の時期ではありません。
医学的にも中学1年の年齢では、まだアポクリン腺が十分成長していませんので、われわれ術者からしてもイクラの粒ぐらいにまで大きいなってからの方が手術をしやすいということも事実です。
わきが手術は一生に一度で十分です。どうせ受けるなら将来絶対に再発しないように完全な状態でする方がよいでしょう。
お母さんには、娘さんが相談した時のために、今は治療法の正しい知識をじっくりと勉強していただきたいと思います。
そのためには、ときどきこの掲示板にアクセスするのもよいでしょう。
時には娘さんのその後の様子をぜひ教えてください。
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