投稿者名:五味院長
タイトル:手術法で必要な条件
Mさん
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さてMさんのご質問のわたしのクリニックで行っている「直視下剥離法」と他のクリニックで行われている方法の違いですが、わたしは体臭多汗の手術法に関しては「違い」が問題ではなく、患者さんの「悩み」を解消するために必要条件を「満たしている」かどうかが大切だと思っています。
もし、そのような条件がクリアーされるならどのような手術法を選択しても結果は同じだと思います。
そこで前にも説明しましたが、ここでもう一度その条件を説明しますので、あなた自身で他の方法がその条件を満たしているかを判断してください。
それは3つあります。(基本的にはそれ以上はありません)
まず第一は、ワキガ手術に関しては、患者さんがどのような臭いで悩んでいるか術前に知ることができることです。つまり、患者さんが本当にわきが体質なのか、ワキガであればどの程度の強さなのかが術前に診断できることです。
多汗手術に関しては、患者さんの多汗の種類が「ワキガ型」なのか「精神性発汗型」なのかそれとも「混合型」なのかが術前に診断できることです。
そのためには「試験切開」をしてから手術に移行できることが必要です。 基本的には「器械的方法」ではこの手続きは不可能です。
このような正しい診断のないままに手術に移行することは非常に危険です。 なぜなら仮にその人がアポクリン腺以外の臭いや対人関係においての臭いの悩みであったなら、手術をしてもその人の「悩み」は決して解消されません。
また多汗症では、多汗のタイプによって減汗効果も手術範囲も異なるのですから術前の診断は患者さんへの説明のためにも必要不可欠です。
第二に、ワキガの原因となるアポクリン腺が完全に100%摘出した事実を「確認」出来る手術法でなければなりません。
完全に摘出したこと確実にしることができなければ、良心のある医師なら何時間かけても手術を終了しることはできないでしょう。アポクリン腺の量や質は人によってさまざまですから、皮膚の変色の程度などの外見的変化やあてずっぽのカンで手術を終了させることは無責任なことです。
そしてこの確認法は現在のところ一つしかありません。それは術者が自分の「目」で直に確認するということです。
アポクリン腺は、日本語で「大汗腺」といわれるほど大きく、ちょうどイクラの粒のようにハッキリと目で確認できます。「直視下」に直に確かめていけば取り残すことは絶対にありえません。
第三は、将来再発再生をさせないためにアポクリン腺の導管部まで含めて取り除くことです。
一時的に全部取ったとしても何年後かにまた臭ってきたら手術の意味がありません。アポクリン腺は腺組織であるため非常に再生しやすいのです。
そのためにはアポクリン腺の腺根を真皮の一部を含めて摘出することが必要です。
わたしのクリニックではそのために皮膚の皮下面の一部を「剥離」するようにしています。アポクリン腺は脂肪層との間で皮膜のよって区切られています。剥離はこの皮膜と皮膚面での両方でおこなうことでアポクリン腺層のみを一層にきれいに取り除くことが可能なのです。
以上の3点が必要条件です。
このことは別に専門家でない素人の人でも少し想像すれば当たり前のことでしょう。
このような条件を満たす手術をしたならばどのような方法でも術後の経過や傷そして色素沈着のし方はほぼ同じです。
その違いはむしろその人の体質の方に依存しているのです。
別の医院では切開口が4センチだというお話ですが、わきの下のしわに沿った切開であれば4センチでも2センチでも結果はさほど変わりません。
きれいになる人はきれいだし、傷ののこる人は残るのです。
わたしも、昔は3センチほどの切開で手術をしていましたが、今は2センチ程度の切開で十分なよう進歩しました(20年も同じ手術をしているのですから当たり前ですね)。
美容外科などでは、切開口が小さいことを売りにして宣伝しているようですが、完全に取り除くことが出来なければ顛末転倒です。むしろ4センチ程度の切開が必要といわれたその先生の方が正直な方で信頼できるのではないかと思います。
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